合格者の平均点は、5年間ほとんど変わらない。変わっているのは「差がつく場所」
EBAの再現答案採点サービスに提出された、令和3〜7年度の再現答案2,154件と得点開示1,434件このデータについて
EBAが毎年実施している「再現答案採点サービス」に提出された再現答案と、利用者から提供された得点開示結果の集計です。EBA受講生に限らず、サービスを利用した受験者全体のデータです。。5年分の答案データと問題・出題の趣旨を突き合わせると、合格者の平均点はほぼ一定のまま、点差が生まれる場所だけが年々変わっていることが分かります。令和8年度は、どこで差がつくのか。データから整理します。
EBAの「再現答案採点サービス」利用者のうち、得点開示結果を提供いただいた合格者の平均点です。EBA受講生だけの成績ではありません。。中央値は252点。合格者の4割は250点未満。高得点は必要ありません。
合格者の平均点は、5年間255点前後から動いていない
まず事実の確認からです。再現答案採点サービスの利用者から提供された得点開示1,434件このデータについて
EBAが毎年実施している「再現答案採点サービス」に提出された再現答案と、利用者から提供された得点開示結果の集計です。EBA受講生に限らず、サービスを利用した受験者全体のデータです。を合否で分けて平均すると、次の2本の線になります。
合計点の平均推移(合否別・得点開示ベース)
令和3〜7年度・得点開示データの集計
合格者の平均は252〜260点、直近4年は255点前後で一定です。作問も採点も毎年変わるのに、合格者の着地点は変わりません。不合格者の平均も215〜220点で安定しており、両者の差は毎年およそ40点です。不合格の中心は「大きく崩れた」答案ではなく、合格ラインまであと25点届かなかった層だと分かります。
分布の中身を見ると、合格者は高得点者の集団ではありません。合格者の中央値は5年間249〜252点で、4割は250点未満、4人に1人は246点以下で合格しています。毎年、240点ちょうどの合格者もサンプルに含まれます。つまりデータが示す合格者の標準像は、合格ライン240点に10点強の余裕を足した得点です。問題は、その10点強をどの事例で取るかです。ここから先が、年々変わっている部分です。
点差はどの事例の、どの設問で生まれているか
事例別に合格者と不合格者の平均点差を並べると、「差のつく事例」が年々入れ替わってきたことが分かります。
事例別の合否差の推移
合格者平均点 − 不合格者平均点(点)
差のつく事例は、事例Ⅰ(R3)→ Ⅳ(R4)→ Ⅰ(R5)→ Ⅳ(R6・R7)と入れ替わってきました。直近2年は事例Ⅳの差が突出しており、R7の合否差20.0点は5年間の最大値です。R7合格者の事例Ⅳ平均72.0点は、5年×4事例=20個の平均点の中の最高値でした。では、その差は事例Ⅳのどの設問で生まれているのでしょうか。設問レベルまで分解します。
R7事例Ⅳ 第3問(NPV)|計算ステップ別の正答率
令和7年度・再現答案の集計
事例ⅣのNPVやCVPの問題は、1つの答えにたどり着くまでに、計算を何段階も積み重ねる構成になっています。最初の段階は、不合格者も6割が正解しています。差が開くのは2段階目以降です。合格者は、不合格者が途中で止まった計算を、あと1段階先まで進めています。これが事例Ⅳで差が生まれる仕組みです。実際、計算数値の解答個数と事例Ⅳの合否差の相関はr=0.90で、解答欄が多い年ほど、段階ごとの正答率の差が積み重なって点差になります。
答案用紙で見る「計算数値の解答欄」の増加(R6→R7)
EBAが本試験の答案用紙を再現したもの。計算数値の解答欄は令和6年度の8個から令和7年度は13個に増加。画像をタップ/クリックすると拡大表示されます。
もうひとつの変化は、経営分析の指標選択です。受験者の選択が上位の指標に集中する割合は、R3の61%からR7の80%へ上がりました。与件文に「この指標を選ばせたい」と分かる表現が増え、財務データが別解の余地を狭める設計に変わった結果です。R7では、与件文の一文一文(職人の高齢化、原材料高騰、工場保有)が、指標選択の根拠と理由記述の得点要素の両方として機能していました。
なぜ、ここまで指標を絞り込むのでしょうか。手がかりは(設問2)の設問文にあります。R5は「設問1で解答した指標のうち1つを取り上げ、悪化した原因を述べよ」と、初めて設問1の解答を明示的に参照する形式になり、この年に指標の集中度は62%から75%へ大きく上がりました。受験生全員が同じ指標を選んでいなければ、「その原因を述べよ」という問いは答案ごとに主題が変わってしまい、共通の採点基準が組めません。逆に、設問2が「特徴を述べよ」というばらつきを許す形だったR6だけ、指標の割れ(自己資本比率/負債比率)が放置されています。つまり設問1で指標を絞り込むのは、設問2を「差のつく問い」にするための準備だと読めます。そう読むと、5年分の設計変更が1本の線でつながります。
経営分析の記述欄(設問2)|聞き方が変わると「テンプレ語」の使用率が変わる
「収益性・効率性・安全性」のいずれかを使用した答案の割合(合否別)
| 年度 | 設問2の聞き方 | 合格者 | 不合格者 |
|---|---|---|---|
| R3 | 財務的特徴と課題を述べよ | 96% | 99% |
| R4 | 劣っている点と、その要因を述べよ | 42% | 45% |
| R5 | 悪化した原因を述べよ(設問1の指標を参照) | 29% | 38% |
| R6 | 財政状態・経営成績の特徴を述べよ | 98% | 97% |
| R7 | 経営戦略上の違いを指摘しながら、その要因を述べよ | 88% | 82% |
聞き方が「要因・原因」型になると使用率が大きく下がり(96%→29%)、「特徴」型に戻ると元の水準に戻ります(97%)。使用率を決めているのは受験生の実力ではなく、設問の形式です。
この表から分かるのは、「収益性・効率性・安全性」というテンプレ語では差がつかないということです。5年間、これらの語の使用率に合否差は一度も生じていません。R7の採点結果と突き合わせても、テンプレ語を書いた答案と書かなかった答案の点差はわずか0.4点でした。配点のない語に、8割超の受験生が80字の3〜4割を使っている状態です。一方、R7で唯一差の兆しが出たのは「職人技術を活かした自社生産・差別化」という戦略の記述で、書けた答案は合格者でも33%にとどまります。設問2の聞き方は「戦略×要因」という最も重い形に到達しており、採点の重みがこの要求に寄った年から、記述欄で差がつき始める可能性が高い。ここが、令和8年度に新しく差がつき始める場所だとEBAは見ています。
そして「記述で差がつく」のは、予測ではなく5年間観測されてきた事実です。事例Ⅳの開示得点の合否差のうち、設問別のキーワード・正誤採点で説明できる部分を差し引くと、毎年2〜5点、比率にして2〜4割の差が説明できずに残ります(R3:2.1点/R4:5.0点/R5:2.1点/R6:3.8点/R7:3.5点)。計算問題の正誤はキーワード採点でほぼ完全に捕捉できるため、この説明できない差が生まれている場所は記述欄、つまり第4問と経営分析の設問2です。しかも記述設問のキーワード採点の差そのものは毎年0〜1.6点と小さく、R7の第4問では「長期借入金」の記載がむしろ不合格者に11ポイント多いなど、要素の有無では差を説明できません。記述の差は「書くべき要素を拾えたか」ではなく、方向の選択・与件の財務状況との整合・理由のつなげ方で生じています。事例Ⅰ・Ⅱと同じ構造が、事例Ⅳの記述欄にもあります。
まとめると、指標選択ではもう差がつきません(設問1の合否差は+0.1〜0.6点)。差の中心は計算プロセスにあり、記述欄は5年間一貫して2〜5点の差を生み続けていて、その比重が高まる兆しがあります。
解答欄を増やす方向に変更 → 計算を最後までやり切る力の差が広がる(合否差 15.7 → 20.0点)
解答欄を減らす方向に変更 → 30点の大型問題で、解答をまとめる力を試す形へ(合格者平均 63.2 → 60.6点)
同じR7に、事例Ⅰでは逆方向の変更が起きています。作問側は解答欄の数を使って、どの力で差をつけるかを調整している。これが5年分のデータから読み取れる作問の傾向です。事例Ⅰは設問数が5→4に減り、配点30点の助言問題が2問になりました。要素の暗記で拾える点は減り、大きな問いをひとつの解答にまとめる力が試される設計です。実際、事例Ⅰの合否差9点強のうち、キーワードの網羅で説明できるのは3〜4点。残る5〜6点は、因果のつながり・設問要求との整合・解答全体のまとめ方で生じています。
| 科目 | 合否差の推移 | 差が生まれる場所 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 事例Ⅰ | 12.7 → 9.3 常に9点以上 | 要素の網羅で説明できるのは3〜4割。残りは因果・まとめ方・設問との整合 | 5年間、常に差がついている唯一の科目 |
| 事例Ⅱ | 12.2 → 6.4 変動大 | キーワードではほぼ説明できない。助言の組み立て方で差がつく | 手応えと得点が最もずれる科目 |
| 事例Ⅲ | 6.6 → 4.5 常に最小圏 | 合格者も点を伸ばせず、差がつかない | 60点を守る科目。時間のかけすぎは非効率 |
| 事例Ⅳ | 6.6 → 20.0 急拡大 | 計算を最後までやり切る力。解答個数と連動(r=0.90) | 直近2年で最も差がつく科目(ただし次章参照) |
令和8年度も事例Ⅳで差がつくのか。考えられる2つのシナリオ
R7事例Ⅳの合格者平均72.0点は、5年×4事例の中の最高値です。この高い水準の翌年をどう読むか。データから考えられる読み方は2つあります。
事例Ⅳで差がつく年が続く
- R6→R7では調整が入らず、むしろ差が広がった(合否差15.7→20.0点)
- 計算力を測る意図が明確で、いまも機能し続けている
- この場合、合否は引き続き計算プロセスをやり切る力で決まる
前例|R6→R7(事例Ⅳの差が2年続けて拡大)
事例Ⅰ・Ⅱに差がつく場所が戻る
- R3の事例Ⅰは合格者平均69点に達した翌年、平均が5.6点下がり、差がつく事例ではなくなった前例がある
- 同じ事例で差がつく年が3年続いた例は、過去5年にない
- R3は事例Ⅰ(12.7点)と事例Ⅱ(12.2点)の2科目で差がついた年だった(事例Ⅲは構造的に差がつかない)
前例|R4→R5(事例Ⅳの合否差が13.2→6.6点へ縮小し、事例Ⅰに戻った)
「事例Ⅳで大きく差がついた翌年」は、過去5年で継続1回・縮小1回です。過去の推移だけでは、どちらになるかは断定できません。ただし現在、多くの受験生は「今年も事例Ⅳで勝負」と考えています。同じ準備をそのまま続けるか。それとも、どちらになっても対応できる準備をするか。これが令和8年度の分かれ目です。
どちらのシナリオでも合格点に届く、3つの準備
結論は、シナリオの的中に頼らない形でまとめられます。5年間変わらない合格者の標準像(合格ライン240点+10点強の余裕)を、次の3つの柱で作ることです。
柱 1事例Ⅳの計算問題を、最後の段階までやり切れるようにする
シナリオ1になれば、これがそのまま合否を決めます。差は難問を正解できるかではなく、計算の2段階目・3段階目まで進めるかで生まれます。第1段階(変動費率・貢献利益・売却CF)を合格者水準の85〜90%で確実に取り、そこからあと1段階先まで進む練習を、解答個数の多い問題で繰り返してください。シナリオ2で事例Ⅳの比重が下がっても、この土台は「事例Ⅳで60点を確保する力」としてそのまま使えます。
柱 2事例Ⅰ・Ⅱの30点問題で、要求に答えた文章を書けるようにする
事例Ⅰの合否差は、キーワードの網羅では6割が説明できません。要素を並べた先の、因果のつながりと設問要求との整合で5〜6点の差が生まれています。この部分は自己採点では確認できません。書いた解答が「要求に答えたひとつの文章」になっているかを、第三者に確認してもらうプロセスを直前期の学習に組み込んでください。シナリオ2では、ここが差のつく中心になります。
柱 3事例Ⅲは60点を守り、時間をかけすぎない
事例Ⅲは5年間、一度も差がつく中心になっていません(合否差は最大9.3点、R7は4.5点)。合格者も点を伸ばせない科目に学習時間を厚く配分するのは、直前期には非効率です。定番論点を確実に処理して60点を守り、浮いた時間を事例Ⅳの計算練習と事例Ⅰ・Ⅱの記述練習に回すのが、データ上の最適配分です。
この3つの柱で作る合計250〜255点は、シナリオ1でも2でも成立する得点構造です。予想を当てる必要はありません。予想が要らない準備をすること。それが、5年分のデータが示す直前期の結論です。
この3つの柱を仕上げる、EBAの2次直前パック
EBAのカリキュラムの土台は、試験委員の著書と過去問の読解にあります。ここまでの分析で、与件の設計・財務指標の設計・解答欄の数・設問文の聞き方といった作問側の変化を特定できたのは、一次資料を読み込む方法があるからです。答案データ2,154件は、その読解が正しいかを毎年確かめるために使っており、確認できた分析だけをカリキュラムに反映しています。
シナリオ1への備え
事例Ⅳが続くなら事例Ⅳ計算特訓講義+計算問題集。差が生まれる「計算を最後の段階までやり切る力」を集中的に鍛える構成です。テーマ別の計算問題集で、CVP・NPV・セールスミックスの各プロセスを最後までやり切る練習を直前期に確保します。
シナリオ2への備え
Ⅰ・Ⅱに戻るなら予想問題演習・全8回+添削、再現答案FB講義。キーワードでは説明できない5〜6点(因果のつながりと設問との整合)は、自己採点では測れません。添削とハイスコア答案の分析講義で、30点問題の解答をまとめる力を仕上げます。
両シナリオ共通の土台
理論マスター講義試験委員著書・過去問に基づく理論の習得。指標選択の集中が示すとおり、いまの試験は与件と理論の対応を一意に設計しています。その対応を読む理論体系を、全4事例分、直前まで繰り返し視聴できる形で提供します。
4事例合計255点の仕上げ
模試・最終チェック模擬試験+最終チェック模試2回。事例Ⅳで崩れず、Ⅰ・Ⅱで積み上げ、Ⅲを守る。4事例トータルの得点設計を、本番より厳しいタイムスケジュールで最終確認します。最新の1次試験論点も演習に反映します。
約3か月・約80時間の講義です(ライトは約60時間)。8月上旬の開講から本試験直前の10月中旬まで、上記の3つの柱をこの順で仕上げます。
予想に頼らない準備を、直前期の3か月で仕上げる
2次直前パック 150,000円(添削あり)/ ライト 98,000円(税込)|2026年8月上旬 開講
データについての注記
- 本分析は令和3〜7年度にEBAが収集した再現答案2,154件および受講者・利用者から提供された得点開示結果1,434件に基づきます。サンプルは再現答案の提出に協力した受験者に限られるため、受験者全体より学習水準の高い層に偏っています(サンプル内合格率30〜44%に対し、実際の合格率は17〜19%)。本ページでは、この偏りの影響を受けにくい「合否別の平均」「群間の差の構造」を中心に分析しています。なお合格者群の得点統計については、毎年の標本最低点が合格基準と同じ240〜241点であり、240点台の合格者が標本合格者の約4割を占めることから、合格者の下位層まで捕捉できていることを確認しています。
- 計算解答個数と合否差の相関(r=0.90)は5年分のデータに基づく参考値です。統計的な確定値ではなく、傾向を示す指標としてご覧ください。
- 令和8年度に関する記述はすべて過去データからの推計であり、出題・採点を保証するものではありません。
- 本試験問題および「出題の趣旨」の著作権は、一般社団法人 中小企業診断協会に帰属します。本ページにおける設問文等の引用・参照は、分析・批評を目的とした必要最小限の範囲で行っており、出典はいずれも同協会の公表資料です。
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