【江口より】2次の学習ツール

江口です。2次試験まであと30日となり、いよいよ直前期に入ります。
EBAでは週末に最後の模擬試験を開催しますが、今年の2次試験を予想した問題を解いてもらい、模試後に解説します。
まるっと1日演習を解いた直後に約3時間も解説を受ける…修行ですね。

さて今日は直前期の学習ツールについて書きます。
2次対策としての学習ツールは、①テキストなどの参考書、②過去問、③演習問題の3つがあります。
それぞれについて評価していきましょう。

①テキストなどの参考書
2次試験問題の事例や1次理論が整理されており、知識の整理・インプット・確認に役立ちますが、2次試験は「記述式」試験ですので、この時期に読んでもそれほど得点には結びつきません。
演習や過去問を復習する際の確認資料として使うとよいでしょう。

②過去問
過去問は非常に有益な教材ですが、これをどの目的に使うかによって効果はさまざまです。そして共通して言える重要な点は、「過去問から具体的な成果を得られるか」です。
例えば、前回のブログでは平成29年度の事例Ⅰ第2問と平成25年事例Ⅰ第1問(設問2)が同じ論点であると書きましたが、そもそもこれらの論点(≒題意)が「同じであった」と特定できなければ、過去問を解くことはただの「慣れ」以上の効果は期待できません。

読者のみなさんがご存知の通り、2次試験では解答が公表されません。
解答例が公表されていれば、設問ー与件ー解答の関係を解析することは誰でもできますが、公表されていないため、解析作業が困難を極めます。

各受験機関は自社の模範解答を出していますが、これまたみなさんご存知の通り、受験機関ごとに解答はバラバラですね。
例えば平成28年度事例Ⅱの第2問で「外国人観光客」をターゲットにする受験機関はほとんどいませんし、第4問のブランド戦略で「有名鶏料理専門店とのコ・ブランディング」と書いてる受験機関はうちだけです(うちは変わった学校なんですね)。

どこの解答が正しいかどうかの議論は冷蔵庫に置いといて、どのように解答の妥当性を評価すべきかについて書きます。

本試験解答のヒントになるもの、つまり、設問ー与件ー(???)を埋めるために役に立つデータは、出題の趣旨と再現答案です。
設問ー与件ー(出題の趣旨×再現答案)により、解析作業の精度を上げることができます。

さらに、これに仮説(=予想解答)を加えることで、「解答」と思われるデータをある程度明確にすることができます。
つまり、①予想解答、②出題の趣旨、③再現答案の3つのデータを使用することで、「解答」の精度を高めることができます。

このような地道な積み重ねによって作成(修正)された解答なら、みなさんの大切な人生を預ける価値はありそうですね。

ちなみに江口は、この作業を2010年(平成22年)から続けています。「熟練の経験と勘でやってるぜ」なんてカッコつけたいところですが、割と地味な作業の繰り返しをしています。
もちろん、多くの試験委員の書物で参照されている伊丹敬之先生やJ.Bバーニーの書籍などを理論のベースとして使用しています。

このような地味な作業の繰り返しにより、「設問」や「与件本文」に、彼らがどのような意図でこのような表現をしているか、この言葉を使用しているかなどが読みとれるようになります。

何がいいたいかというと、「過去問は、繰り返し読んだだけでは、解いただけでは実力はつかない」ということです。
出題者の意図を解釈できなければ、過去問はただの「過去」のデータに過ぎず、これを模倣して解答を作成しても、それは「今年」の問題に対応したことにはなりません。

つまり、過去問を使用して学習をする場合は、まず「解答例が信頼できるか」を検証する必要があります。
とはいえ、残り30日を切った今になって検証もへったくれもぼったくりもありませんよね。解答例を信じて使うしかありません。

過去問を使用する際は、
①設問から得られる情報(通常は情報展開する)を想定すること、
②与件から得られる情報(①に対して収束する)を特定することこの2点をセットで考えるようにしましょう。その上で、
「今年こんな風に聞かれたら、これこれこういう理論を展開・想定しよう、そして、与件でこれこれを確認しよう」
なんて風に考えられるようにしてくださいね。過去問は、あくまでも「今年の試験」のために使うツールですから。

③演習問題
演習問題は「もう一人の講師」として、講師以上に重要な影響力を持ちます。
演習は受講生を矯正するツールですから、その責任は重大です。

これには良くも悪くも各受験機関の癖がはっきりと出ていますので、医師などに相談の上、使用上の注意をよく読んでから処方してください。
演習問題に、「あなたにはこれこれができるように作問した」「これこれを想定できるように作問した」という、受験機関の一貫したメッセージをちゃんと理解してください。このメッセージがない演習にはなんの価値もありません。
メッセージの内容の良しあしの議論は冷凍庫の隅においておきまして、いまはそれを信じて反復訓練しましょう。
「反復して訓練して、できるようになる」ことが大切です。筋トレと同じですね。
もしこの演習問題のメッセージが、特定の過去問を反映している場合は、その過去問で確認することも意味があります。

ただ、気を付けなくてはいけないことは、「解答例を覚えて書けるようになる」、いわゆる演習バカです。
これは本試験ではまったく通用しません。
演習はプロセスを学ぶものですから、設問ー与件ー解答の関係に着目して使用してください。たとえば、

設問→与件→解答 という流れで解答を特定できるか。また、
解答→与件→設問 という流れで設問まで戻れるか。なんて考えると、演習を効果的に使えますよ。
やってみてくださいね。

なんだか東京は急激に気温が下がりましたね。こんな時期に風邪ひいたら一生後悔しますから、今夜あたりから長袖セーターでも羽織って寝てくださいね。