「出題者の意図はわかる」という前提と前工程の重要性

えぐちです。
週末はEBAでは2回目の模擬試験を開催しました。
特に直前期ではEBA理論モデルシートに従って、事例問題で問われる理論を想定して取り組むように指導しています。模試受験後はえぐちがみっちり解説します。

EBA中小企業診断士スクールの模擬試験解説会の様子



さて今日は、8月23日に発売されたEBAの書籍を紹介します。お陰様で、各書店で早速追加注文を頂いているそうです。


この書籍は、おもに2つの構成となっています。その1つは、80分で70点取るための時間の使い方についての解説です。EBAでは80分の管理を4つ(事例Ⅱのみ5つ)のフェーズに分けて解説しています。



EBAでは4つの工程のうち設問解釈・概要把握(資源チェック)までを前工程、与件解釈・編集までを後工程と位置付けています。

EBAの特徴は、前工程が厚い点にあると言えます。個別問題を与件文を使用して解釈する前に、じつに30分もの時間を配分しています。初めて聞く方は驚かれるのではないでしょうか。

なぜそこまで前工程に時間をかけるのかというと、答えは「出題者の意図を外さない解答を作成するため」です。

中小企業診断士試験は平成13年の新制度になってからすでに18回実施されており、平成16年試験からは出題の趣旨が公表されています。そして、数年前から可能になった得点開示により、再現答案を詳細に分析することが可能になりました。えぐちは2010年(平成22年)試験から再現答案の採点サービスを継続しています。毎年100名以上の再現答案を採点し、協会評価や得点開示結果をもとに詳細な分析をしてきました。この分析結果から得られた結論は、「出題者の意図は予め想定できる」です。

もちろん、5~6問の中には出題者の意図が捉えにくい問題もありますが、例外と言ってよいでしょう。ほとんどの問題は予め出題者の意図を想定することができます。

そして、出題者の意図を予め想定するためには、「理論と時間」が必要になります。そのためにEBAでは前工程に30分もの時間を配分します。

最近の試験は難易度が上昇していることから、与件解釈が非常に難しくなっています。このため、設問解釈時点で出題者が与えてくれたヒントをもとに、期待される理論などを明確にしておくことの重要性がますます高まっています。

と、このように能書きを書いても伝わりませんよね。昨年の試験を使って簡単に説明します。

以下は平成30年事例Ⅰの1問目と2問目です。出題者の意図、つまり両方の設問で出題者が記述させたかった意図の「違い」がわかりますか?

第1問(配点20点)
研究開発型企業であるA社が、相対的に規模の小さな市場をターゲットとしているのはなぜか。その理由を、競争戦略の視点から100字以内で答えよ。

第2問(配点40点)
A社の事業展開について、以下の設問に答えよ。(設問1)A社は創業以来、最終消費者に向けた製品開発にあまり力点を置いてこなかった。A社の人員構成から考えて、その理由を100字以内で答えよ。

どちらもこれまでのA社の経営戦略を聞いています。両者の違いを識別できないと、80分で70点は取れません。実は両問ともに、「市場」についての問題であることが出題の趣旨から明らかになっています。

結論を書きますと、前者は「市場規模と競争優位性」を意図する問題であり、後者は「保有機能と競争優位性(もしくは付加価値創出)」を問う問題です。「適当なこと言うな」と思われるかもしれませんが、この解釈は、試験委員の著書や高得点再現答案(80点)の共通点から証明できます。

上記のように、前者は〇〇、後者は△△と、両者を明確に記述できなくても、前者は〇〇なら、後者は〇〇以外という解釈ができますので、設問解釈時点でかなり自由度を下げることが可能になります。

続きまして、事例Ⅱを使って紹介します。

以下は平成30年事例Ⅱの第2問~第4問です。以下の3つの設問について、設問解釈時点で難易度の高い順に並び替えたうえで、優先順位をつけてください。

第2問(配点25点)
B社は今後、新規宿泊客を増加させたいと考えている。そこで、B社のホームページや旅行サイトにB社の建物の外観や館内設備に関する情報を掲載したが、反応がいまひとつであった。B社はどのような自社情報を新たに掲載することによって、閲覧者の好意的な反応を獲得できるか。今後のメインターゲット層を明確にして、100字以内で述べよ。

第3問(配点25点)
B社は、宿泊客のインターネット上での好意的なクチコミをより多く誘発するために、おもてなしの一環として、従業員と宿泊客との交流を促進したいと考えている。B社は、従業員を通じてどのような交流を行うべきか、100字以内で述べよ。

第4問(配点25点)
B社は、X市の夜の活気を取り込んで、B社への宿泊需要を生み出したいと考えている。B社はどのような施策を行うべきか、100字以内で述べよ。

この、設問解釈時点での難易度の評価は非常に重要です。事例問題では時間をかけても報われにくい問題もありますが、そのほとんどは設問解釈時点で評価できます。

上記の解答は、難易度の高い順に第4問→第3問→第2問となります。どれも助言問題ですが、3つの問題は難易度が全く違います。これは、設問解釈時点で評価可能です。

ここでは簡単に説明します。

第2問:解答構成上、ターゲットの指摘以外は「自社情報(自社資源)」を列挙するだけでよいため、与件要素の選択や構成が難しくない。


第3問:「従業員を通じて」という設問制約により、B社が活用する自社資源は「従業員」であることが確定している。このため、助言内容は「従業員」を活用した内容に制限され、ターゲットや助言による効果が特定しやすくなる。


第4問:「夜の活気」の特定が必要となり、リスクがある。またB社の活用する資源は「夜の活気」の情報に依存するため、第3問のように特定できない。


上記のように、設問解釈時点でかなりの準備が可能になります。



最後に、事例Ⅲも例を使って説明します。以下は平成30年の事例Ⅲです。下記の各問題を、①経営戦略レイヤー、②生産レイヤーに分類してください。可能なら、②生産レイヤーも細分類してみてください。


第1問(配点20点)
顧客企業の生産工場の海外移転などの経営環境にあっても、C社の業績は維持されてきた。その理由を80字以内で述べよ。


第2問(配点20点)
C社の成形加工課の成形加工にかかわる作業内容(図2)を分析し、作業方法に関する問題点とその改善策を120字以内で述べよ。


第3問(配点20点)
C社の生産計画策定方法と製品在庫数量の推移(図1)を分析して、C社の生産計画上の問題点とその改善策を120字以内で述べよ。


第4問(配点20点)
C社が検討している生産管理のコンピュータ化を進めるために、事前に整備しておくべき内容を120字以内で述べよ。


第5問(配点20点)
わが国中小製造業の経営が厳しさを増す中で、C社が立地環境や経営資源を生かして付加価値を高めるための今後の戦略について、中小企業診断士として120字以内で助言せよ。



解答は以下となります。
①経営戦略レイヤー:第1問と第5問
②生産レイヤー:第2問~第4問
 生産管理レイヤー:第3問と第4問
 生産現場レイヤー:第2問


上記②は、試験委員の木内正光先生による分類です。このように、設問解釈時点でレイヤーが分類できれば、各レイヤーで使用する生産理論を明確に使い分けることができます。


生産理論ってなに?と思ったあなたは、次の用語をA:生産管理、B:生産現場、C:それ以外に分類してみてください。


【用語】
特性要因図、手順計画、進捗管理、事後保全、標準作業、日程計画、管理図、パレート図、余力管理、資材発注計画、生産ロットサイズ、平準化生産、ロット分割生産、パー割生産、差立て、納期管理、現品管理、外注管理、内外作区分、置場集約化、段取り改善、部品共通化、ヒストグラム、工数計画、計画サイクル、設備更新計画、マンマシンチャート、流動性のわな




1つだけ無関係なのが混じっていますが、上記の用語が分類できないと、今年の事例Ⅲで70点は取れません。昨年の再現答案分析結果から今年の事例Ⅲは難化(平成29年や平成27年レベル)が予想されていますので、最低限、レイヤー分類は完璧にできるようにしておく必要があります。


以上、EBAが前工程を重視する理由を説明しました。書籍ではこの前工程について、詳細に解説していますので、興味がある方はぜひお読みください。



また、「80分でできる高得点答案」に関心がある方は、EBA書籍後半の「実践編」をお読みください。ここではEBAメソッドによる解法を解説していますが、あくまでも「80分で作成可能な合格答案」が前提です。高得点者の答案から、「後工程で余計なことをしていない」ことが確認できるはずです。高得点答案作成者の解答から、80分で実現可能な70点答案を学びたいという方は、ぜひご一読ください。

今日から9月に入り、いよいよ2次試験直前期モードですね。残り7週間を有意義に活用し、今年見事に2次筆記試験を突破するために、当書籍があなたの役に立てれば嬉しいです。