江口の一問解説 No.14 〜2次試験 解説編〜

EBA中小企業診断士スクール 統括講師の江口明宏です。

今回は、前回の「江口の一問解説 No.11 〜2次試験 問題編〜」を解説いたします。

解説

7段落にあるA社の課題を整理してみましょう。

しかし、創業からおよそ17年の時を過ぎたとはいえA社の主力商品は、前身であるX社が築きあげてきた主力商品に依存しており、A社が独自で作り上げたものではないことは事実である。かねてより目標として掲げてきた全国市場への進出の要件ともいうべき首都圏出店の夢もいまだにかなっているわけではない。売上高30億円というビジョンを達成するためには、全国の市場で戦うことのできる新商品の開発が不可避であるし、それを実現していくための人材の確保や育成も不可欠である。

A社の課題は、細かく分けると
①全国進出の目標達成
②首都圏出店の夢実現
③売上30億円のビジョン達成
④全国の市場で戦うことのできる新商品の開発
⑤人材の確保や育成

の5つとなります。これを与件の表現に従って整理すると、以下のようになります。

課題1
⑤人材の確保や育成(によって)④全国の市場で戦うことのできる新商品の開発(によって)
③売上30億円のビジョン達成

課題2
②首都圏出店の夢実現(によって)①全国進出の目標達成

ちなみに課題1の③売上30億円のビジョン達成は、⑤④だけでなく、①②の達成も必要条件であると解釈するほうが自然です。つまり、①②④⑤の達成により③の実現、となります。

さて、7段落全体の文脈を解釈すれば、冒頭の「しかし、創業からおよそ17年の時を過ぎたとはいえA社の主力商品は、前身であるX社が築きあげてきた主力商品に依存しており、A社が独自で作り上げたものではないことは事実である。」という始まり方に意味があると解釈すべきで、「A社独自の主力商品の開発」は、隠れ課題と考えられます。この隠れ課題は、「A社独自の主力商品の開発とは、具体的には全国の市場で戦うことのできる新商品の開発のことである」と解釈をすることも、「まずは独自で商品を開発できる体制を作り、そのうえで全国で戦える商品を作る」のように順序で解釈することもできますが、文脈からは「独自の開発力」と「全国区製品開発力」は別物だと考えられます。これは地方で実家暮らししているニートの息子に、「まずは仕事見つけて一人暮らしをしなさい」、「それから仕事頑張って、大都会で暮らせるようになりなさい」と説教するケースに置き換えると理解できます。ニートの息子にいきなり「自立して大都会で一人暮らししろ」とはいいにくいですよね。

A社には独自の商品開発経験そのものがありませんから、全国市場で戦えるような商品開発力は、より難易度の高い課題であると考えるべきでしょう。

A社に不足している資源は、
①独自での商品開発経験(人・ノウハウ)
②全国に通用する新商品開発経験(人・ノウハウ)
③自社店舗による直接販売(モノ・ノウハウ)
④首都圏店舗(モノ・ノウハウ)

となります。整理すると面白いのですが、なんとA社は商品開発も、店舗運営もノウハウがないのです。まったく経験のないA社に、「全国区の商品開発しろ」「首都圏に自社店舗だせ」なんて、中小企業診断士として助言できますか?

A社は人材の確保・育成を課題と認識していますが、これは「商品開発面の課題」はA社の強みの構築のために内部化していこうとする経営判断です。すると、もう1つの課題となる、「全国進出のための首都圏出店」はどうすべきだと考えますか?このあたりが中小企業診断士としてのみなさんの腕の見せ所になりそうです。