【2次直前】模擬試験問題の紹介

江口です。
今日は2次過去問を使い、A社の戦略を考察していきたいと思います。
まず、以下の2つの設問を解釈してみましょう。

平成20年のA社は機内食製造業で、平成22年のA社は砂糖を主力商品とする卸売業です。

平成20年度第2問(配点20点)
 A社の取引の80%以上を占めている航空業界の近年の厳しい状況が、A社に対しても強くコスト削減を求めることになっている。その背景を、A社が取り扱っている商品特性の視点から、100字以内で述べよ。

平成22年度第1問(配点30点)
 A社が主力事業としている砂糖業界の環境変化と事業展開の変容について、以下の設問に答えよ。
(設問2)
 これまでの事業展開を継続することができなくなった経営環境の変化は、どういったものであるのか。A社の取り扱う食品原材料という商品特性を踏まえて、100字以内で説明せよ。

江口がブログで繰り返し書いている「同論点問題」です。
それぞれA社はこれまでのビジネスモデルを維持することができなくなり、 「同じ戦略」を採用しています。以下、与件文を引用します。

平成20年度
10段落
 新社長に就任した現社長は、二人の創業者とも相談し、すぐに経営の革新に着手した。その一つは、組織体制の変更である。アントレー事業スタートの時から手腕を振るってきた料理長を第一線から相談役に勇退させ、若いシェフを料理長として採用した。また、工場長を取締役に抜擢して、それまで料理長が掌握していた人事権、購買権などの権限を移管した。

11段落
 併せて、それまで流れ作業で行っていたアントレー生産の最終段階の盛りつけプロセスにも手をつけている。「シングル・ワークステーション(SWS)」と呼ばれるA社が採用したやり方は、担当者が一人で一つのアントレーの盛りつけを行うもので生産性の向上を図ることを目的としている。

12段落
 こうしたコスト削減と生産性向上の施策を講じるとともに、現社長は、将来に向けて新しい事業の柱を構築することを目的にして、新規事業として一般消費者向けのパック食品の製造販売にも乗り出した。自社ブランド製品を立ち上げ、空港近隣や食材供給先のホテル、近隣スーパーへの納品や百貨店の食品フェアへの参加、インターネットを利用した頒布会によって一般消費市場での事業展開をスタートさせた。このビジネスが本格化し、市場規模が大きくなれば、現在休眠中の第3工場を再稼働させることも念頭に置いている。

平成22年度
5段落
 A社はまた、近年、地方の有力店との連携を強化している。というのも、地方の有力店の経営が厳しさを増し、そうした取引先から救済を求められているからである。後継者問題で廃業に追い込まれたり、あるいは客のビジネスの進化についていけず機能不足に陥っているなどの問題を抱える有力店の友好的買収である。結果的に、こうした動きによって物流拠点を革新して効率性を高め、取引先だけでなく地元の末端顧客にとっても利益をもたらしている。A社が救済のために買収した二次問屋には、トップマネジャーこそA社から転籍させるが、そこで雇用されている従業員は、それまでと同じ条件で雇用することにしている。

6段落
 こうした経営環境の変化の中にあっても、A社は、長年にわたって伝統的な家族主義的経営を掲げて年功序列型の給与体系を適用してきた。
食品原材料を取り扱う商売に往々にして見られることであるが、ある程度の商圏さえ持っていれば、あまりあくせくしなくともきちんと売り上げがあがってきたからである。しかし、取引先の倒産や転廃業が頻発する中で、ある程度新陳代謝を促していかないと存続すら危ういという不安があって、わずかながらではあるが成果主義的要素を取り入れた。もっとも、月額の生活給部分は年功序列を守り、ボーナスの部分に成果を反映させるといった程度のものである。

7段落
 他方、A社のもうひとつの動きは、先代がスタートさせた砂糖の自社加工の強化である。砂糖や小麦粉の仕入れルートの強みを活かして、事業領域を広げようという考えである。現社長の代になってからも、増員、さらなる設備の導入など経営資源を投入している。大手製糖メーカーが年間100万本以下では対応しないようなスティックシュガーや粉糖などの事業で、中小喫茶店チェーンなどをターゲットに10万本程度の少量でも対応するといったニッチな市場を狙った事業である。大手メーカーではリスクが高くコスト面でも合わないことから、以前は全国に中小加工場が事業展開していたが、衛生基準や品質を確保するためにユーザー側が自ら設備や管理を充実させざるを得なかった。そこに、A社がビジネスチャンスを見いだして新規事業として取り組んだのである。現在、この新規事業の売り上げは5%を占めている。

さて、この与件をどのように解釈しますか?
ヒントは、平成20年度は(10+11)および12段落の戦略で、 平成22年度は(5+6)および7段落です。
ここでのポイントは平成20年度の12段落、平成22年度の7段落です。
それぞれ、この段落は、先に紹介した設問を踏まえたA社の戦略です。

この問題はとても重要で、江口はそろそろ出ると思ってます。
今年この「商品特性」が問われた場合、あなたは「何を」想定できますか?
ここで想定する理論がしょぼいと合格できませんから、今年出ないことを祈りましょう。

もし、今年この論点が出題されてしまった場合、これが理解できないあなたはD評価を取るかもしれません。
なぜでしょうか?それは、以下の設問を見ればわかります。

平成20年度
第5問(配点20点)
 一般消費市場への展開というA社の新規事業開拓の成否について、中小企業診断士として意見を求められた。この新規事業が「成功すると思う」か「失敗すると思う」かを明確にして、その立場から、理由を100字以内で述べよ。

平成22年度第4問(配点20点)
 食品原材料商社であるA社が事業拡大のために、食品原材料以外の商材に手を延ばすべきかどうか、中小企業診断士としてA社社長からアドバイスを求められた。どのようなアドバイスをするかについて、100字以内で述べよ。

わかりましたか?
そうです。
この年は、1つの論点で2つの問題を出題してるんですね。
天丼問題です。
2つで合計40点。40点分が影響する、その年の合否を分ける問題だったわけです。

さて、EBAで先週行われた模擬試験での問題は以下となります。

第2問
 A社が2010年代に行った事業展開について、以下の設問に答えよ。
(設問1)
A社がG社の買収を行った理由について、A社が取り扱っている国内原材料の商品特性の視点から、100字以内で述べよ。

上記設問は、平成20年度・平成22年度を踏まえた今年の予想問題です。
某大手スクールの方々からは「こりゃないわ」と酷評されてるようですが、 江口にとってはぜひ受講生に知っておいて欲しい重要な問題です。

この論点についての詳細は、自分で考えましょう。

最後に、上記問題をテーマとした1次試験問題を紹介します。

平成30年度
第6問
 価値連鎖(バリューチェーン)のどれだけの活動を自社の中で行うかが、その企業の垂直統合度を決めると言われている。自社の中で行う活動が多いほど、垂直統合度が高く、その数が少ないほど垂直統合度が低いとした場合、ある部品メーカーA社が垂直統合度を高める理由として、最も適切なものはどれか。

×ア A社の部品を使って完成品を製造している企業は多数存在しているが、いずれの企業もA社の部品を仕入れることができないと、それぞれの完成品を製造できない。(このケースは、A社の資源の希少性が高いということになる。A社の資源の希少性が高い場合、A社が垂直統合度を高める必要性は低い)

×イ A社の部品を作るために必要な原材料については、優良な販売先が多数存在しており、それらの企業から品質の良い原材料を低コストで仕入れることが容易である。(品質の良い原材料を低コストで仕入れることができる場合、これを加工した場合の付加価値は、高コストで仕入れた場合よりも高い。A社は高コストで仕入れた場合よりも高い利益を獲得できる可能性が高いと考えられるため、垂直統合度を高める必要性は低い)

×ウ A社の部品を作るために必要な原材料を製造しているメーカーは、その原材料をA社以外に販売することはできない。(A社が原材料の製造メーカーと排他的独占契約を締結している場合、A社は原材料仕入におけるリスクをもたないため、垂直統合度を高める必要性は低い)

〇エ A社の部品を作るために必要な原材料を製造しているメーカーが少数であり、環境変化により、A社はこれらの原材料の入手が困難となる。(ウと逆のケースであり、A社事業の存続上のリスクとなる為、後方垂直統合を図ることで原材料の製造メーカーを自社内に取り込むことでリスクを解消する)

×オ A社は、A社の部品を作るために必要な原材料を製造しているメーカーとの間で、将来起こりうるすべての事態を想定し、かつそれらの事態に対してA社が不利にならないようなすべての条件を網羅した契約を交わすことができる。
(これは完備契約の説明。仕入先と完備契約を結ぶことで、①契約履行の詳細な監視(モニタリング)と、②取引主体が契約上の義務を果たさない場合には法的制裁などが科されるという脅威によって機会主義をコントロールする。仕入先の機会主義的行動を回避できる場合、A社が垂直統合度を高める必要性は低い)

上記設問もまた、試験委員の小川正博先生がご自身の著書で参照している経営学の書籍がエビデンスとなっています。
EBAの1次対策でも講義で参照している、企業経営理論を学習するうえで不可欠な書籍です。
1次試験と2次試験が無関係だと思ってる人は、永久に中小企業診断士の応用能力は身に尽きません。