【2次直前】1次試験からの出題予想理論

江口です。

今日は、今年の1次試験問題から2次試験問題を予想した理論について紹介します。
下記設問および与件をを解釈して、解答を作成してください。解答例は本ブログの最後に載せてます。

設問
第1問(配点60点)
中小企業であるA社は最近になって飲食店事業に進出したが、これに関する以下の設問に答えよ。

(設問1)
A社がこのような多角化を行った理由について、そのリスクとともに120字以内で述べよ。

与件

  A社は、資本金2,000万円、従業員10名、売上高5億円の文房・事務用品卸売業である。インターネットによる直接販売の普及もあり、文具・事務用品卸売の市場規模は縮小傾向であり、A社の売上高や経常利益は減少傾向にある。A社社長は今後、文房・事務用品卸売事業の将来性に不安を感じ、5年前から新規事業を模索していた。

  いろいろな事業を検討した結果、A社社長は、当時流行し始めていたステーキ店を始めることを決めた。しかし、A社社長は飲食店経験もなく、営業ノウハウも開店に関する知識も経験もなかった。今後、ステーキ店が国内で普及していくだろうとの予測によるもので、まったくのゼロからのスタートだった。

今年の1次試験における多角化の問題を紹介します。

平成30年度第1問
 企業の多角化に関する記述として、最も適切なものはどれか。

〇ア 外的な成長誘引は、企業を新たな事業へと参入させる外部環境の条件であるが、主要な既存事業の市場の需要低下という脅威は、新規事業への参入の誘引となりうる。
×ウ 企業の本業や既存事業の市場が成熟・衰退期に入って何らかの新規事業を進める場合、非関連型の多角化は、本業や既存事業の技術が新規事業に適合すると判断した場合に行われる(関連型多角化の説明)。
×エ 事業拡大への誘引と障害は、企業の多角化の形態や将来の収益性の基盤にまで影響するが、非関連型の多角化では、既存事業の市場シェアが新規事業の市場シェアに大きく影響する(非関連型は既存事業の市場シェアが新規事業に影響しない)。
×オ 内的な成長誘引は、企業を多角化へと向かわせる企業内部の条件であり、既存事業の資源を最大限転用して相乗効果を期待したいという非関連型多角化に対する希求から生じることが多い(関連型多角化の説明)。

1次試験では、非関連多角化は経営リスクの分散になると説明されていますが、試験委員が参照している著書では、非関連多角化は経済価値の観点から非効率であり、非関連多角化から得られる効果は、関連多角化においてもすべて得ることができると結論づけています。

参考までに非関連多角化の経済価値は以下となります。
①リスク分散
②税効果
③市場支配力の活用
④企業規模と従業員の多角化インセンティブ

つまり、非関連多角化よりも関連多角化のほうがより大きな価値を得ることができるため、多角化戦略で大きな価値を生む可能性のある動機である、①範囲の経済、②コア・コンピタンス、③資本配分上の優位性、④多地点競争は、関連多角化の下でのみ実現可能であるとしています。

上記点を考慮した場合、特に中小企業における多角化戦略は、必然的に関連多角化である必要があります。

確かに2次試験問題では、事例企業の経営資源を考慮させる意図の問題が繰り返し出題されていますね。

平成29年度では第2問で
平成28年度では第1問(設問2)で
平成26年度では第1問で
平成25年度では第1問(設問2)で
平成23年度では第1問(設問1)で

それぞれ、A社の経営資源を制約条件とした問題が出題されています。

この点で、今年の1次試験で多角化の設問が出題されたことは示唆に富んでいます。
EBAでは、今年の1次試験で出題された理論のうち、今年の2次試験での出題可能性が高い理論をテーマに直前期の演習問題を作問しました。
2次試験は1問あたり20点の配点があり、特定の設問が他の設問と直接関連することが多いため、最大で40点の影響があります。
20点もの影響がある、つまり評価2つ分も差がつくということです。
参考までにEBAの予想問題演習で取り上げた理論を紹介します。

企業経営理論
・関連・非関連多角化
・範囲の経済と情報的経営資源
・VRIO分析とケイパビリティ
・買収と買収後の組織(U型組織)
・価値連鎖(バリューチェーン)と垂直統合
・スリー・サークル・モデル・内発的動機付け
・組織学習(低次学習と高次学習)
・オープンイノベーション
・ソサイエタル・マーケティング
・価格理論
・RFM分析・ブランド理論

運営管理
・PQ分析と工場レイアウト
・多品種少量生産
・マン・マシンチャート
・パレート図
・現品管理
・ボトルネック工程対応

いかがでしょうか?上記理論を予想演習2回転(全8回)と、模擬試験2回転(全8回)合計4回転(全16回)で網羅しています。

最終講義では上記理論を含めた今年の予想論点をまとめます。
興味ある方はオプションとして受講できますのでぜひ参加してください。

ただし、教室受講は残席あとわずかですので、締め切りの際は通信での受講となります。
詳細はこちらからどうぞ。
https://www.ebatokyo.com/chokuzen







【解答例】
インターネットによる直接取引の普及もあり文具・事務用品卸売の市場規模が縮小したため、経営リスクを分散し、新たな収益源を確保すべく非関連多角化を行った。既存事業で培った経営資源を活用できず、範囲の経済が得られずに経営資源が分散するリスクがある。