【2次】具体的な努力と具体的な結果

えぐちです。
今日は、昨年度の2次筆記試験を合格されたHさんの得点開示結果を使い、この方が1年間目指してきたことを検証します。

2次試験は240点で合格です。
結果さえ出せば文句なし「合格」、その通りですが、その結果を生み出すための「原因」については、多種多様な手段が存在するため、何がベストなのかが不明瞭となっています。

そこで今日は、EBAがもっとも重視している「設問解釈」について、具体的な課題を設けて訓練して合格された方を追跡してみます。
EBAでは「設問解釈で得点の半分が決まる」と考え、このプロセスを最重視した指導をしています。

まず、Hさんの体験記をお読み下さい。

ブログ記事はこちら


「おかげさまで二次試験、二度目のトライで合格することができました。
日々、脳の衰えを感じる歳(Hさんは54歳です)なので本当に良かったです。
ホッとしています。ありがとうございました。

改めてあの10月21日を振り返ると、昨年の自分よりも上手くいったと思えることが2つあります。
一つは緊張しながらも落ち着いて試験に臨めたこと。
もう一つは4つの事例とも時間の過不足なく終了5分前に終えることができたことです。

事例1と3の解答構成を組み立てることが苦手な私は、与件の紐付けで迷いが生じ、消しゴム多用で「編集」に結構時間がかかることが課題でした。

6月の江口先生との個人面談で「設問解釈で解答を想定し、与件はそれを確認しに行くだけ。」とのアドバイスを頂き、設問解釈の精度向上に取り組みました。
EBAの演習の解答解説の「設問解釈」部分だけを切り取った別シートをつくって、設問だけを見てレイヤー、要求タイプを基に、解答の方向性をどう想定すればいいのか、江口先生はどこまで想定することを期待しているのか比較を繰り返す中、理論を確実に自分のものにしていないと解答想定が全くできないことに気づき、理論チェックと設問解釈別シートを何回も繰り返していきました。

最初の設問解釈の20分で設問の難易度、解答の方向性をきちんと想定できれば、与件と設問を行ったり来たりすることもなくなり、解答構成の組み立てにも余裕が生まれ、結果消しゴム地獄から解放されました。
設問解釈から始まる80分のマネジメントを時計を見るのではなく、体に憶えさせることは本当に大切なことだと痛感しています。

あと、本当にやってみた江口解答の「写経」は自分の解答グセを補正するのに重要な作業でした。
演習の自分の解答と江口解答の違いを見比べていただけでは気づかない発見が本当にあるのです。
自分で江口解答を写経すると違和感がある部分があったのです。
例えばそれまで何となく「収益性の向上を図る」と書いていた箇所で、「収益性の改善を図る」では助言としての意味が大きく違う等に気づけたことは大きな収穫でした。

今回の二次試験、演習問題の既視感や、予想問題が的中したなど本当にありがたいこともありましたが、私は「自由度を下げる」「迷ったら設問解釈にもどる」「ターゲットとリーチ資源と適合資源」など講義で言われていたキーワードをその場で念じながら臨めたことが落ち着いて対応できた要因だと思っています。

今思えば、事例4って心理戦でしたね。

以上


Hさんが課題としていたことは、一言で「80分のマネジメント」ということになります。
そして、時間管理を狂わす最大の理由は、「消しゴム使用による書き直し」ですが、書き直しせざるを得なくなるのは以下の要因があります。

・時間後半で設問間の与件紐づけの誤りに気付いた
・時間後半で設問内の与件解釈の誤りに気付いた

2次の事例問題を解いたことがある方の多くが経験されていることだと思います。
「Gという根拠を第2問に使用すると思っていたが、ほかの問題を処理するうちに、その根拠は第3問に使用する根拠であることに気づいて第2問から書き直した」
「Hという根拠の解釈ができずに、不十分と知りつつ解答編集したのちに、あとからHという根拠の解釈に気づき、解答を書き直した」

いずれも「当初のプラン変更」により書き直しということになります。
そして、このような事態が生じてしまうのは、「確度の高い設問も、低い設問も無差別に処理する」ことが原因です。
Hさん「事例1と3の解答構成を組み立てることが苦手な私は、与件の紐付けで迷いが生じ、消しゴム多用で「編集」に結構時間がかかることが課題でした」
Hさんが自覚していた課題です。

たとえば事例Ⅰでは、経営戦略レイヤー、経営組織レイヤーという大分類があり、さらに経営戦略には4つ、経営組織には3つの中分類があります。
設問解釈時点でこのレイヤーによる分類が「できる/できない」で最初の難易度評価ができます。
そして、分類が「できる」問題はさらに中分類以降の特定が「できる/できない」により、もう一歩踏み込んだ難易度評価を行います。
このようにすることで「難しい問題とそうでない問題」の難易度評価が定量化できます。

これに加え、個別理論展開が「できる/できない」により、更に踏み込んだ難易度評価を行います。
この個別理論展開とは、たとえば「顧客生涯価値」とか、「人材の流動性を確保する組織」とか、「小さな市場を選択する理由」といった設問表現です。
このプロセスを経て、与件を読みに行く前にある程度の難易度評価ができているため、与件根拠とのひもづけのしやすさまで事前にわかります。
ここまでのプロセスが「網を張る」しかけになります。

設問解釈時点で難易度が高いと評価した問題は、与件解釈において、

①設問に対応した根拠が特定しにくい
②設問に対応した根拠に自信がもてないため、与件解釈の分散が大きくなる

というリスクが発生します。
つまり、予め「網を張れ」ていない問題は、網の中になにかが引っかかったとしても、与件解釈の時間が見積れないばかりか、解釈結果そのものの分散が大きくなるというリスクを伴います。
結果的に、このような問題では高得点は期待できません。
事前に網を張れない問題は、「難問」になる可能性が高いということです。

Hさんは自分のマネジメントが安定しない理由に気づき、課題を明らかにすることができました。
それ以降、Hさんはまさに設問解釈の精度向上を最重要課題として取り組んできました。
Hさん「EBAの演習の解答解説の「設問解釈」部分だけを切り取った別シートをつくって、設問だけを見てレイヤー、要求タイプを基に、解答の方向性をどう想定すればいいのか、江口先生はどこまで想定することを期待しているのか比較を繰り返す中、理論を確実に自分のものにしていないと解答想定が全くできないことに気づき、理論チェックと設問解釈別シートを何回も繰り返していきました」

Hさんの風貌からは想像もつかない(失礼)ほど、ストイックに課題と向き合ってきたことがうかがえます。
この結果、Hさんは「80分をマネジメントできる状態」を体得できました。
Hさん「最初の設問解釈の20分で設問の難易度、解答の方向性をきちんと想定できれば、与件と設問を行ったり来たりすることもなくなり、解答構成の組み立てにも余裕が生まれ、結果消しゴム地獄から解放されました。設問解釈から始まる80分のマネジメントを時計を見るのではなく、体に憶えさせることは本当に大切なことだと痛感しています。」
Hさんは“具体的な努力”により、「どのような状態が管理できている状態なのか」を知覚できるようになりました。
ここでHさんのEBAでの演習結果(全7回)を見てみましょう。

図表の中の赤い棒は、Hさんと面談した時期です。


いかがでしょうか。
Hさんの苦手とされた事例ⅠとⅢが、演習後半にかけて改善していることが確認できると思います。
そして、Hさんの本試験結果は以下のようになりました。
まえのブログでも書きましたが、EBAでは合計200点を総合A評価としています。
EBA評価では事例Ⅰは55点以上でA評価としましたので、ほぼA評価と考えてよいです。
Hさんは、本試験において苦手であった事例ⅠとⅢで見事にA評価を獲得しています。
まさに「具体的な努力が生み出した具体的な結果」と言えるでしょう。また興味深いことに、Hさんが得意としてきた事例Ⅳが「唯一のB評価」となっています。

Hさん「今思えば、事例4って心理戦でしたね」

Hさんらしいコメントです。
Hさんはご自身の勝因を、以下のように振り返っています。
Hさん「改めてあの10月21日を振り返ると、昨年の自分よりも上手くいったと思えることが2つあります。一つは緊張しながらも落ち着いて試験に臨めたこと。もう一つは4つの事例とも時間の過不足なく終了5分前に終えることができたことです。」
Hさんがどのようにして「緊張しながらも落ち着いて試験に臨めたのか」、そして「4つの事例とも時間の過不足なく終了5分前に終えることができたのか」

ブログを読まれたあなたは、もうご理解いただけたと思います。
具体的な努力を、具体的な結果につなげましょう。あなたの大いなる挑戦を応援しています。