2次筆記試験で出題された1次試験問題からの理論

えぐちです。今日は2次筆記試験で問われる1次試験問題の理論について書きたいと思います。今日では、2次筆記試験において1次試験で出題された経営理論が問われることはかなり知られるようになりましたが、まだ具体的なイメージが持てない方も多いようです。

そこで今日は、過去に2次筆記試験において出題された1次試験問題について紹介していきたいと思います。

●チーム組織(チーム理論)

【2次試験問題】
平成30年事例Ⅰ 第3問(配点20点)

A社の組織改編にはどのような目的があったか。100字以内で答えよ。

与件文

従前A社では、電子回路技術部門、精密機械技術部門、ソフトウェア技術部門と専門知識別に部門化されていた。しかし、複写機関連製品事業が先細り傾向になった頃から、製品開発部門、品質管理部門、生産技術部門に編成替えをし、各部門を統括する部門長を役員が兼任した。製品開発部門は、環境エネルギー事業の開発を推進するグループ、法人顧客向けの精密機械を開発するグループ、LED照明関連製品を開発するグループに分けられ、電子回路技術、精密機械技術、ソフトウェア技術などの専門知識を有する技術者をほぼ同数配置した混成チームとした。品質管理部門と生産技術部門には、数名の技術者が配属され、製品開発部門の業務をサポートすると同時に、複数の生産委託先との調整業務を担っている。



【1次試験問題】
平成30年1次試験 企業経営理論 第14問
※○×は選択肢の正否を示す。

企業組織を取り巻く状況の変化に柔軟に対応するために、従来の部門組織や恒久的なグループ編成だけでなく、チームを採用することが効果的な場合がある。チームに関する記述として、最も適切なものはどれか。

×ア 共通の目的を達成するためにバーチャルチームを形成して業務を遂行する際に、メンバー同士が直接顔を合わせた経験がある場合は、そうでない場合と比べてタスク志向性が高くなり、社会的・感情的情報交換は少なくなる。

×イ 遂行すべきタスクに必要なスキルや経験の多様性が低い場合は、個人よりチームの方が高い業績をあげる傾向にある。

×ウ タスクフォースは恒常的に設置されている機能横断型チームであり、初期段階ではメンバーが多様性や複雑性への対処の仕方を学ぶために時間がかかることがある

〇エ チームで業務を遂行する場合は、一般に多くの時間と資源を必要とし、コンフリクトが顕在化する傾向にある。

×オ チームメンバー間の信頼関係が確立されていると、メンバーは他者が自分を利用しようとしていると感じる傾向が低くなり、自分の弱点をさらけだすことも可能になるため、リスク志向性は低くなる



●内発的動機付け

【2次試験問題】
平成30年 事例Ⅰ 第4問(配点20点)

A社が、社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、金銭的・物理的インセンティブの提供以外に、どのようなことに取り組むべきか。中小企業診断士として、100字以内で助言せよ。


【1次試験問題】
平成30年 企業経営理論  第15問

働き方や価値観の多様化とともに、外発的動機づけに加え、内発的な動機づけがいっそう重要になっている。内発的な動機づけに関わる代表的な論者による説明として、最も不適切なものはどれか。

〇ア A.マズローの欲求段階説における自己実現欲求は、外発的に動機づけられるものではなく、自分自身の理想を追い求め続けることを通じた内発的な動機づけとも考えられる。

×イ E.メイヨーとF.レスリスバーガーのホーソン実験では、従業員が自分たちの作業条件を決定することによって内発的に動機づけられていたことを発見し、これをホーソン効果と呼んだ。

〇ウ M.チクセントミハイは、特定の作業に没頭する中で、自身や環境を完全に支配できているという感覚が生まれることをフロー経験と呼び、そうした経験は他者からのフィードバックも必要とせず、給与などの報酬とも無関係であるとした。

〇エ R.W.ホワイトが提唱するコンピテンス(有能性)概念では、環境と相互作用する有機体の能力自体が、「うまくいった」という内発的な動機づけの源泉となる。

〇オ 内発的動機づけを概念として広く知らしめたE.デシは、報酬のためにやらされているのではなく、自分の好きにやっているという自己決定が重要であるとした。



●ブランド戦略(コ・ブランディング)

【2次試験問題】
平成28年 事例Ⅱ 第4問(配点30点)

昨今の多くの中小しょうゆメーカーでは、インターネット販売を展開している。B社もまた、新規事業として直接、最終消費者に対するインターネット販売に乗り出したいと考えている。

(設問1)

インターネット販売を軌道に乗せるためにB社が採るべきブランド戦略を50字以内で提案せよ。


【1次試験問題】
平成28年1次試験 企業経営理論 第31問

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。多くの消費者の支持を得ることができた①ブランドをどのように管理し、成長させていくかは、企業収益を左右する重要な課題である。②ブランド開発戦略として説明されているように、例えば、同じブランド名を用いて、同じカテゴリーに形、色、サイズ、フレーバーなどを変えた製品を導入する A や異なるカテゴリーの新製品を導入する B がとられる。同一ブランドでのさらなる市場浸透策が難しいと判断される場合には、同じカテゴリーに新ブランドを展開する C や、他社との共同開発という形をとり、自社のブランド名と他社の人気ブランド名の2つを同一製品で用いる D が検討される。

(設問1)

文中の空欄A〜Dに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

×ア A:ブランド拡張     B:マルチ・ブランド

   C:ライセンス・ブランド D:ライン拡張

×イ A:マルチ・ブランド   B:ブランド拡張

   C:ライン拡張      D:コ・ブランディング

×ウ A:マルチ・ブランド   B:ライン拡張

   C:コ・ブランディング  D:ブランド拡張

×エ A:ライン拡張      B:コ・ブランディング

   C:マルチ・ブランド   D:ブランド拡張

〇オ A:ライン拡張      B:ブランド拡張

   C:マルチ・ブランド   D:コ・ブランディング



●マン・マシン・チャート

【2次試験問題】
平成30年 事例Ⅲ 第2問(配点20点)

C社の成形加工課の成形加工にかかわる作業内容(図2)を分析し、作業方法に関する問題点とその改善策を120字以内で述べよ

与件文

図2で示す「成形機2台持ちのマン・マシン・チャート(現状)」は、製品Aの成形加工を担当している1人の作業者の作業内容である


【1次試験問題】
平成30年 運営管理 第8問

NC 工作機械 5 台を 2 人の作業者でオペレーションしている。ワークの着脱作業は作業者が行う。作業者によってワークが取りつけられプログラムが入力されれば自動的に加工が行われ、終了すると自動的に停止する。現在、この職場では作業者の稼働率が高く、機械が段取待ちで停止していることが多く発生している。この職場における改善活動に関する記述として、最も適切なものはどれか。

×ア 各機械の稼働率を調べるため、管理図を作成した。

×イ 機械の停止時間を短くするため、加工時間を短縮する加工方法の検討を行った。

〇ウ 作業者の持ち台数を検討するため、マン・マシンチャートを作成した。

×エ 製品の平均スループットタイムを短くするため、MTM 法による分析を行った。


●現品管理

【2次試験問題】
平成30年 事例Ⅲ 第4問(配点20点)

C社が検討している生産管理のコンピュータ化を進めるために、事前に整備しておくべき内容を120字以内で述べよ。

与件文

成形機の段取り時間が長時間となっている主な原因は、金型、使用材料などを各置き場で探し、移動し、準備する作業に長時間要していることにある。図2で示す「成形機1の段取り作業内容の詳細」は、製品Aの成形加工作業者が、昼休み直後に行った製品Bのための段取り作業の内容である。金型は顧客からの支給品もまだあり、C社内で統一した識別コードがなく、また置き場も混乱していることから、成形加工課の中でもベテラン作業者しか探すことができない金型まである。また使用材料は、仕入先から材料倉庫に納品されるが、その都度納品位置が変わり探すことになる。


【1次試験問題】
平成30年 運営管理 第14問

JIS で定義される現品管理の活動として、最も不適切なものはどれか

〇ア 受け入れ外注品の品質と数量の把握

〇イ 仕掛品の適正な保管位置や保管方法の設定

〇ウ 製品の適正な運搬荷姿や運搬方法の検討

×エ 利用資材の発注方式の見直し

●余力管理

【2次試験問題】
平成28年 事例Ⅲ 第2問(配点30点)

現在C社が抱えている最大の経営課題は、収益改善を早急に図ることである。生産管理面での対応策を160字以内で述べよ。

与件文

顧客からの注文は、各製造グループに直接入り、各製造グループで各々生産計画を立て、原材料調達から出荷まで行っている。製造グループごとの生産管理によって、同種類の原材料調達における単価の差異、加工ロスによる歩留りの低下、出荷のための輸送費用のロス、製造グループ間での作業員の移動の制限などがみられる。


【1次試験問題】
平成28年 運営管理 第11問

工数計画およびそれに対応した余力管理に関する記述として、最も不適切なものはどれか

×ア 各職場・各作業者について手持仕事量と現有生産能力とを調査し、これらを比較対照したうえで手順計画によって再スケジュールをする。

〇イ 工数計画において、仕事量や生産能力を算定するためには、一般的に作業時間や作業量が用いられる。

〇ウ 工数計画において求めた工程別の仕事量と日程計画で計画された納期までに完了する工程別の仕事量とを比較することを並行的に進めていき、生産能力の過不足の状況を把握する。

〇エ 余力がマイナスになった場合に、就業時間の延長、作業員の増員、外注の利用、機械・設備の増強などの対策をとる。




上記のように、その年の1次試験で出題された経営理論が、同年の2次筆記試験で出題される傾向があります。このため、今年1次試験を受験しなかった方は、今年の1次試験問題をチェックすることをお勧めします。



平成24年ではコーズリレーティッド・マーケティングの問題が出題されましたが、この理論は平成21年第30問の企業経営理論で出題されています。当年の1次試験からの出題ではありませんでしたが、この年の2次試験では配点の関係もあり、コーズリレーティッド・マーケティングの知識をもたない多くの受験生が事例ⅡでD評価を取り敗退しました。



出題者は1次試験で出題された知識を意図的に2次試験においても出題しますが、これは2次試験の目的となる「中小企業診断士としての応用能力を有するか」を試すという意味では当然と言えます。


1つの知識の有無で1年を棒に振ることのないように、せめて今年の1次試験問題はしっかりチェックしておいてください。



EBAでは直前期の演習問題で今年の1次試験で出題された理論の中から、2次試験で出題可能性の高い問題を出題しています。今日はそのうち、先週の模擬試験で出題した「戦略的提携」の問題を紹介します。以下の設問に答えてください。



第2問(配点20点)

 A社が行ったY社との資本提携にはどのような目的があったか。100字以内で答えよ。



この問題に解答するためには、戦略的提携の3つの類型の識別が必要となります。



①業務提携(出資を伴わない)

②業務・資本提携

③ジョイント・ベンチャー


上記の理論は、J.バーニーの理論に基づいています。以下は、今年の企業経営理論の問題と解説です。
※かっこ内はEBAスクールによる解説



令和元年
企業経営理論 第5問

戦略的提携に関する記述として、最も適切なものはどれか。

×ア 戦略的提携では、大学や政府機関が参加することはないが、同一の業種で競争関係にある企業間よりも異業種の企業間での提携が多く、継続的な関係の構築が図られる。

(戦略的提携には大学や政府機関が参加することもある。また、提携の効果は選択肢ウにあるように多岐にわたり、同一業種間の提携を通じた①規模の経済の追求もある)


×イ 戦略的提携は、共同開発や合弁事業設立のように、企業が独立性を維持して緩やかな結びつきを構築するが、資本参加や当該企業同士の組織的な統合を通じて経営資源の合体を図る。

(戦略的提携には①業務提携、②業務・資本提携、③ジョイント・ベンチャーがあり、このうち独立性を維持して緩やかな結びつきを構築する提携は①業務提携になる)


×ウ 戦略的提携は、提携による協力で得られる恩恵を最大限享受できる組織的な統合を図り、業界内の新しいセグメントや新たな業界への低コストでの参入と経営資源の補完を主な目的とする。

(戦略的提携の狙いは、①規模の経済の追求、②競合からの学習、③リスク管理とコスト負担、④暗黙的談合の促進、⑤低コストでの新規市場参入、⑥新たな業界もしくは業界内新セグメントへの低コスト参入、⑦業界もしくは業界内新セグメントからの低コストでの撤退、⑧不確実性の対処があるため、選択肢では⑤のみ触れており不適切)


×エ 戦略的提携は、当事者間での裏切りのリスクを内包するが、その回避のために、企業には互いの独立性を維持しつつも、階層関係を構築して関係の固定化を図ることが求められる。

(裏切りを回避する方法は、①法的責任を含めた契約、②資本提携、③裏切り企業の評判、④ジョイント・ベンチャー、⑤信頼関係の構築がある。このうち②や④や資本関係をもつため、独立性は維持されない)


〇オ 戦略的提携は、範囲の経済を利用できる内部開発によるコストよりも、共同開発のような提携によるコストが小さい場合、内部開発に代わって選択される。

 (内部努力によってある特定の範囲の経済を実現するコストと、その同じ効果を戦略的提携を通じて実現するコストがほぼ同じである場合、内部開発は戦略的提携の代替物となり得る)



今年の1次試験問題を踏まえて、さきほどの設問の解答を考えてみてください。

戦略の狙いが「外部資源の獲得」であることは間違いありません。それ以外に、どんな狙いがあったのかを自分でも考えてみてください。