わかっているようでわかっていない設問の解釈②(解答構成編)その2

えぐちです。

前回から少し時間が空いてしまいましたが、設問解釈②(解答構成編)のつづきです。

以下の問題の解答構成を想定してください。

という宿題でしたね。

第3問
X社から求められている新規受託生産の実現に向けたC社の対応について、以下の設問に答えよ。
(設問1)
C社社長の新工場計画についての方針に基づいて、生産性を高める量産加工のための新工場の在り方について120字以内で述べよ。

(設問2)
X社とC社間で外注かんばんを使った後工程引取方式の構築と運用を進めるために、これまで受注ロット生産体制であったC社では生産管理上どのような検討が必要なのか、140字以内で述べよ。

「新工場の在り方」「どのような検討が必要なのか」という要求はこれまでの事例問題ではなかった設問設計でした。

このため、解答構成の想定ができずに戸惑った受験生も多かったと思います。

EBAでは設問解釈時点で事例問題の設問タイプを①情報整理タイプ、②期待効果タイプ、③助言タイプの3つに分類しています。

①情報整理

事例企業の経営成果に対する理由や要因を記述させる問題。解答構成は「要因」+「結果」の組み合わせになり、「要因」が重視される。

②期待効果

ある意思決定について、その影響や効果を記述させる問題。解答構成は「結果」+「結果」の組み合わせとなる。

③助言

事例企業の抱える問題点や課題を解決するための助言を記述させる問題。解答構成は「要因(助言)」+「結果」の組み合わせとなる。

昨年の試験後にEBAで作成した解答では、いずれも「②期待効果/③助言」タイプと分類しました。

このように分類した理由は、「一見すると期待効果の記述が期待されているようにみえるが、その効果を得るための助言も期待されている」と判断したからです。

以下は当時作成したEBA解答例です。

(設問1)
自動車部品専用の熱処理工程を新工場に移設して機械加工部門を同じ建屋に施設する。機能別レイアウトを維持し、前後工程の流れを重視して近接させる。マシニングセンタを導入し、工程間の運搬頻度を考慮して配置する。作業標準化を進めて多工程持ちを推進する。

解答構成は「要因(助言)」のみです。

ただし、助言内容についてはC社の資源制約を考慮せず、「到達状態(あるべき姿)」に近い内容の助言としています。

助言内容は、すべて設問で明示される「生産性の高い量産加工ができる」という期待効果に対する「要因(助言)」として構成しています。

以下は診断協会が公表した出題の趣旨です。

「C社社長の方針に基づいた新規受託生産のための新工場の在り方について、助言する能力を問う問題である。」

出題者はこの問題を③助言問題として出題したことが明らかになっています。

この問題は、「新工場の在り方」という表現の解釈が難しく、解釈を誤ると想定する解答構成が出題者の意図とズレてしまい、加点機会を失うことになります。

具体的には、「〇〇できる状態」といった、あるべき姿を中心とした解答構成で、それを得るための具体策を助言しないと加点されません。

続きまして(設問2)の解答例をみていきます。

(設問2)
機械加工部と熱処理部の生産計画を統合し、X社からの納期3日前の確定受注情報に合わせて日程計画のサイクルを短縮する。受注量に合わせて小ロット生産を行い、日程計画に合わせて材料発注サイクルも短縮する。余力管理により工程間の負荷を調整し、工程間在庫を削減して生産リードタイムを短縮する。

解答構成は、「要因(助言)」+「結果」としています。

「結果」に対応する要素が「工程間在庫を削減して生産リードタイムを短縮する」に当たります。

以下は診断協会が公表した出題の趣旨です。

「X社とC社間で後工程引取方式の構築と運用を進めるために、C社で必要な生産管理上の検討内容について、助言する能力を問う問題である。」

(設問1)同様、出題者は③助言問題として出題していたことが明らかになっています。

設問は「どのような検討が必要なのか」です。

「検討」は「よく調べ考えること。種々の面から調べて、良いか悪いかを考えること。」という意味ですが、「助言」とは違います。

しかし出題者はこの設問を「助言問題です」と断定していますので、われわれはそれに従うべきですね。

今回の問題は、設問の表現から解答構成を想定することは難しい問題ですが、120字、140字という字数制約を考慮すると、解答構成上「要因(助言)」も期待されていると想定することができたと思います。

もちろん、このような想定は、多くの問題の設問解釈と出題の趣旨を比較して学習することが必要になります。

与件文を読み、「何(内容)を書けばよいのか」を検討することは重要なことですが、「どのように(構成)書けばよいのか」の想定は、内容以上に重視されるものです。

なぜなら、出題者の意図を外した解答構成は、内容如何にかかわらず加点されないからです。

以下の相談に対する2人の解答を読んで、どちらが適切だと思うか評価してください。


D社社長「新型コロナウィルスの影響で売上が激減しています。先日取引銀行の担当者から持続化給付金という制度があると聞いたのですが、これを利用することのメリットを教えてください。」

中小企業診断士A「御社は法人ですので、要件に該当した場合は国から最大で200万円の給付を受けることができ、資金不足を補填することができます」

中小企業診断士B「御社は法人ですので、最大で200万円が給付されます。申請するためには、昨年の確定申告書の控え、今年の毎月の売上高がわかる帳簿、法人番号が必要になります。現在はまだ国会で審議中ですが、決定後にすぐに申請ができるように予め準備しておきましょう。」

D社社長の相談を事例問題に例えると②期待効果問題となります。

つまり、持続化給付金を利用するという意思決定の効果を教えてくれという意図です。

この要求に対して、中小企業診断士Aさんは利用する効果のみを答えていますが、中小企業診断士Bさんは、効果に加えて助言をしています。

D社社長は持続化給付金の申請を決めたわけでなく、申請した場合の効果が聞きたかっただけですから、「予め準備しておきましょう」と助言したBさんの解答はD社社長の意図を外していることになります。

それでは、Bさんの解答が適切になるためのD社社長の質問を考えてみましょう。

答えはこのページの一番下に書いておきます。























D社社長「新型コロナウィルスの影響で売上が激減しています。先日取引銀行の担当者から持続化給付金という制度があると聞きました。これを利用しようと思うのですが、利用することのメリットと留意点を教えてください。」