【江口より】緊張感と疲労感

台風19号による被害を受けられた皆様に心よりお見舞い申し上げます。被害に遭われた方々に謹んでお見舞い申し上げます。そして一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。



今週日曜日の2次試験まであと残すところ2日となりました。試験まで1週間を切ると、なかなか勉強に集中できなくなりますね。ふと試験当日のことを考えてしまい、胸が苦しくなってしまいます。今日は、そのような心境の方に向けてメッセージを書きたいと思います。


初めて2次試験を受験される方は、経験したことのない試験への不安が強いと思います。過去問や演習問題を解いたり、再現答案を見たりして試験で問われるものを理解していても、実際の体験はまったく別物です。訓練してきた学習を発揮できるか、また初めての本試験で時間管理ができるのか、不安な気持ちに襲われていると思います。


2次試験の受験経験がある方は、今年こそはという思いがある一方で、その強い思いがプレッシャーになり、これまでの努力が当日に発揮できなくなることの不安に襲われているのではないかと思います。


この資格に挑戦しようと思った当初は、企業経営に必要な知識や考える力が身につくこの資格を、純粋に魅力的と感じて手に入れたいと思いました。2次試験まで合格することは大変な努力が必要ですが、自分の努力により克服可能な挑戦・試練だと思うことができました。


でも、いざ週末に本試験を控え、この試験に合格するために勉強以外に超えなければならない高いハードルに直面しています。それが、緊張状態の克服です。


とても困るのは、この緊張状態は前触れもなく発症してしまうことと、適切に抑制する手段がみつからないことです。


私は毎年試験会場に受験生の応援に行きます。声を掛けてくれる方ひとりひとりと握手して話しかけるのですが、全員もれなく緊張して表情がこわばっています。実際にお会いできるのは数十名ですが、きっと今年受験されるほとんどの方が同じ状態ではないかと思います。緊張は、本試験当日まで続きます。


「そんなこと書かれるとますます緊張してしまうじゃないか」と思った方、もう少しだけお付き合いください。



この緊張には必ず終わりがあります。そしてその瞬間は、4つの事例が終わった17時20分ではありません。事例Ⅰが終了する11時までにこの緊張状態は解消されます。稀に事例Ⅱまで緊張を維持できる人もいますが、ほとんどの人は事例Ⅱでは緊張状態はある程度解消しています。


事例Ⅰ 超緊張状態(実力発揮度50~60%)

事例Ⅱ 軽い緊張状態(実力発揮度70%~80%)

事例Ⅲ やや疲労感(実力発揮度80%~90%)

事例Ⅳ 疲労感(実力発揮度60~70%)



上記は試験当日の緊張感・疲労感の想定と実力発揮の程度のイメージです。当日の自分の状態を想定することで、起きうる問題を回避したり、被害を小さくすることができます。



事例Ⅰは最も緊張する初めの事例科目であり、また、1問目・2問目の経営戦略レイヤーの問題への対応に理論想定が求められることから、大崩れしてしまうリスクも高めです。事例Ⅰの1問目・2問目は「設問解釈」が最も大切で、1・2問目の与件根拠を切り分けるための重要なヒントを読み取る必要があります。与件文をいくら読んでも「切り分け」のヒントは書かれていませんので、設問解釈に十分に時間をかけてください。


この1・2問目の入り方で崩れなければ、組織レイヤー・人的資源レイヤーの問題は実力を発揮しやすい問題になります。


とにかく事例Ⅰは設問解釈が勝負です。特に問われているのは「要因」なのか「変化」なのか、「助言」なのか、それとも「効果や成果」「リスク」なのか。問われている内容に対する解答を強烈に意識してください。「課題を聞いているのに助言する」といったケアレスミスの回避を最重視しましょう。



具体化してみるとすこし落ち着いてきますね。


事例Ⅰが終わると、「まず1事例終わったな」という安堵感と「うまくできなかったなあ」という後悔の気持ちと不思議な高揚感が複雑に混ざった気持ちになります。ほとんどこの時、緊張感は胡散しています。ここでは安心せずに、気持ちを「事例Ⅱ」に切り替えてください。


事例Ⅱにおける設問解釈では特に、①新規顧客/既存顧客、②インターネット上/店舗等、③外部連携の有無、④1次理論制約(ブランドなど)の有無を意識してください。これらの条件は、各設問の自由度を下げる際に役立ちますが、本試験ではこれらを意識し忘れてしまい、助言で何を書いてよいのかわからないといった事態になりかねません。かならず意識しましょう。



事例Ⅱが終了すると、「半分終わった」という達成感を少しだけ感じます。もちろんできがよくないことを悔いる気持ちもセットです。この時間は事例ⅠやⅡの自分の処理を振り返りたい欲求に襲われますが、振り返って「やった!」と思うことはありませんので、大切な時間は事例Ⅲの準備に使いましょう。緊張が解けた安堵感の中、ついお昼を食べすぎてしまう方もいますので、食事量は注意しましょう。午後は突然襲う眠気が集中力を奪います。この1時間は、事例Ⅲの準備と休養のために使いましょう。当日アイマスクを持っていくのも効果的だと思います。目を温めてリフレッシュできるアイマスク(シート)などもお勧めです。眠れなくても、目をリフレッシュするだけでだいぶ違います。



事例Ⅲも事例Ⅰと同様、設問解釈が最も重要です。生産管理/生産現場の識別ヒントを見逃さないようにすること、そのヒントをしっかり活用して与件を切り分けることを最重視してください。運搬改善はIEの領域ですが、生産統制でも扱います。切り分けが難しかったら迷わず両方で使用しましょう。管理図やバスタブ曲線がでてもあわてないでください。昨年のマンマシンチャートと同様、「図の深い読み込み」は不要です。第1問が情報整理問題の場合、必ず最後の戦略問題とセットで処理をしてください。強み、弱み、外部資源、ICT投資、高付加価値の意識を忘れないでください。



事例Ⅲまで終了すると、明確に疲労を感じます。明らかに集中力は低下しています。最後の事例は「根性」の科目になります。根性で乗り切るのではなく、根性入れて「管理しよう」という意味です。模擬試験では4事例を通して受験する体験をしましたが、さすが本試験です。模試よりも断然、消耗しています。



事例Ⅳは、管理がすべてです。始めの10分で全体を俯瞰しましょう。問題数、設問数、知識問題、個別問題の理論確認、処理する/しないの判断、優先順位、時間配分。



経営分析は指標にこだわりすぎず、22分で編集まで。次は知識問題です。与件文の解釈が必要かを必ずチェックしましょう。残り40分で2問を選んでください。個別問題は変数処理(CVPなら固変分解や変動費/固定費の変化情報の処理)がすべてです。しっかりメモを残してケアレスミスを見える化しましょう。



配点など気にしません。相対評価の試験で、まして今年は6000人が受験する年です。「崩れない強さ」が勝敗を決めます。時計を見て17時10分を過ぎていたら、新しい問題に着手せず、解いた問題の確かめ算と転記ミスなどに時間を使いましょう。



緊張やプレッシャーは克服するものではなく、受け入れる性質のものです。緊張を抑制できないあなたは、弱い人間ではありません。また緊張を抑制できる人間が強い人間というわけでもありません。強い人間とは、結果ではなく過程を受け入れる勇気を持てる人です。この緊張や怖さを、逃げたい気持ちを抱え、それでも挑戦したいと思える人のことです。



いまのあなたが強い人間である必要はありません。「強い人間でありたい」と思えるなら、あなたはもう昨日のあなたではありません。昨日とは違う新しいあなたが、かならず試験においてあなたを導いてくれます。



あなたがこの素晴らしい資格への挑戦を、少しでも楽しむことができることを祈っています。



江口明宏

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