令和3年度のC社物語

事例Ⅰ、事例Ⅱにつづき、本日は事例ⅢのC社物語です。

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C社は革製の鞄(バッグ)を製造・販売する中小企業です。

C社の売上の8割がバッグメーカーからの受託生産品で、残り2割が自社ブランド製品です。

バッグメーカーからの受注は受注量は多いけど低価格品が中心で利益率は低いです。一方、自社ブランド製品は高価格品で、C社の収益に貢献しています。

C社はX社の縫製加工の一部を請け負う下請企業として創業しましたが、徐々に奇妙に加工工程の拡大と加工技術の向上を進め、X社が企画・デザインした製品の完成品までを一貫生産できるようになり、X社の商品アイテム数の拡大もあり生産量も増大しました。しかしその後、X社がコスト削減のために海外発注を進めたためC社の生産量は減少しました。C社社長は売上増加を図るため、他のバッグメーカーとの取引拡大を図るとともに、製品デザイン部門を新設し、自社ブランド製品の企画・開発・販売を進めました。

C社の自社ブランド製品は旅行雑誌で特集され、手作り感ある高級仕様が注目されたことから、一時は生産能力を超える注文を受けたこともありました。
さらに旅行雑誌を見たバッグ小売店数店からC社ブランド製品の引き合いがあり、小売店との取引を開始することができました。

C社はまた自社独自のウェブサイトを立ち上げ、インターネットによるオンライン販売を開始しました。
Y社からECサイトでコラボしないかとの誘いもありましたが、Y社の新米を鞄に入れると風味が損なわれ、さらに出来立ての鞄が臭いと言われたため断念し、自社サイトで販売することになりました。
オンライン販売は現在ではC社の自社ブランド製品販売の中心となっています。

C社が自社ブランド製品において高価格販売を可能にしている理由は、「手作り感ある高級仕様」の付加価値が評価されているからです。
そしてこの価値を支えているのは、部分縫製から全体縫製までをすべて一人の熟練職人が担当し、完成品まで担当する丁寧な手縫作業です。

C社社長は、付加価値が低く収益に貢献していない受託生産品の売上比率を下げ、自社ブランド製品の売り上げ比率を高めていきたいと考えています。
しかし受託生産品は売上の8割を占めるC社の主要事業で受注量も多いため、急激にこの比率を変えることはできません。
そのためC社は、低収益事業の生産効率化に取り組みつつ、高収益事業となる自社ブランド製品の開発強化を進めていきたいと考えました。

C社はまず初めに、受託生産品の製造工程の効率化に取り組みました。C社は2つの課題を掲げ、課題解決を図りました。

1つめの課題は、生産計画改善による生産余力の確保です。

C社は生産計画において受注量よりも多いロットサイズを設定しています。このため縫製工程に余計な負荷がかかっています。
また生産計画が月1回のみとなっていることから、計画立案後の受注内容の変動や特急品の割り込みによって月内でも生産計画があっさり変更されるなど崩れてしまっています。
さらに、納期が1ヶ月を超える資材があるにもかかわらず資材発注を月1度の生産計画に合わせているため、資材欠品により生産計画が変更するなど、ここでも生産計画が崩れています。

受託生産品の1回の受注量は年々小ロット化しているため、現状の生産計画を継続すれば、今後ますます生産の無駄が増えることで縫製工程の負荷が増大してしまいます。
そして生産計画が崩れることで作業手配に無駄が生じるため、場当たり的な現場対応により生産工程が非効率になります。
そこでC社は、生産計画を改善することで生産の無駄をなくし、縫製工程の生産余力の確保に取り組みました。

まず、生産計画の作成サイクルを短くします。そのうえで小ロット生産とすることで縫製工程の作業負荷が軽減できます。
また短サイクルで生産計画を作成することで受注内容の変動や特急品の割り込みを吸収できるため、生産計画が崩れにくくなります。
C社では各工程リーダーが生産計画に基づいて作業割り当てをしていますので、不要な作業者の割り当てをなくすことで生産余力が確保できます。
さらに生産計画の作成サイクルに合わせて資材発注サイクルも短く刻むことで需要予測期間を短縮し、欠品による生産計画の変更を抑制することができます。

以上により縫製工程の作業負荷を軽減し、生産計画が崩れにくくなることで作業割り当てが効率化します。結果、受託生産品の製造工程が効率化できます。

2つめの課題は、縫製工程の生産性向上や生産能力の向上です。
C社の生産現場は縫製工程の負荷が最も高くなっていることから、この工程の生産能力向上が課題となります。
C社はすでに若手職人の養成のため細分化した作業分担制で担当作業の習熟に取り組んでいますので、分業化された各工程作業者の習熟は進んでいると考えられます。
C社は多能工化を進めて多工程持ちとすることで、仕上げ工程や検品工程の作業者に縫製工程の部分縫製が応援できるようになります。

また、検品工程で製品の出来栄えにばらつきが発生した場合に手直し作業が発生しています。
この作業がC社の生産性が低い原因の1つとなっていますので、加工方法の標準化に取り組むことで出来栄えのばらつきをなくし、手直し作業を削減します。

以上により、現状の人員のままで、縫製工程の生産性を向上させることが可能になります。結果、受託生産品の製造工程の効率化が図れます。

製造工程の効率化に取り組んだC社は、いよいよ自社ブランド製品の開発強化に取り組みました。C社はこの計画を実現するために、製品企画面と生産面の課題を明確にしました。

製品企画面の課題は2つありました。
1つは、製品デザイン部門において、新製品の企画・開発経験不足を補うための人材確保や育成です。

もう1つは市場ニーズの収集です。
C社の自社ブランド新製品はインターネットのオンライン販売情報などを活用して企画していますが、既存製品の販売情報だけでは自社が取り扱っていない製品ニーズを知ることができません。
ところがC社は、複数のバッグ小売店数社と取引をしていますので、卸先小売業から市場ニーズを収集することが可能です。
受託生産品の受託先であるバッグメーカーは競合にあたるので利害が衝突しますが、卸先小売店ならその心配はありません。
C社の自社ブランド製品を気に入って販売してくれている企業なので、魅力的なC社ブランドのラインナップが増えることは小売店にとっても利益になるからです。

自社製品以外の市場ニーズを収集する機会が増えれば製品デザイン部門を育成する機会になるため、これら2つの課題は1つとして見ることもできます。

生産面の課題も2つありました。
1つ目は在庫問題の解消です。
自社ブランド製品は見込生産により注文ごとに在庫から引き当てていますが、欠品や過剰在庫が生じています。
今後、自社ブランド製品開発を強化していくためには生産計画の精度を向上させ、欠品や過剰在庫を解消し、適正在庫を維持することが課題となるでしょう。

2つめの課題はバッグを一人で製品化できる製造全体の技術習熟を重視した若手職人の育成です。

C社の自社ブランド製品の価値は「手作り感ある高級仕様」で、これは部分縫製から全体縫製までをすべて一人の熟練職人が担当し、完成品まで担当する丁寧な手縫作業によって支えられています。
熟練職人の高齢化が進む中で、C社は若手職人の養成に取り組んでいますが、育成にあたり、細分化した作業分担制で担当者の習熟を図ろうとしています。
この方法では縫製工程から仕上げ工程までを一人で加工できる職人が養成できず、高齢化した熟練職人の退職後は自社ブランド製品の高付加価値を支える職人がいなくなってしまいます。

このため、バッグを一人で製品化するために必要な製造全体の技術習熟の促進がC社の生産面の課題となります。

C社社長は今後、大都市の百貨店や商業ビルに直営店を開設し、自社ブランド製品の販売を拡大しようと検討しています。
その際、自社ブランド製品を熟練職人の手作りで高級感を出すか、それとも若手職人も含めた分業化と標準化を進めて自社ブランド製品のアイテムを増やすかで悩んでいます。

C社は自社ブランド製品において在庫適正化を図るという課題があります。現時点の自社ブランド製品は25アイテムですが、このアイテム数でさえ過剰在庫や欠品を招いています。
直営店を出店すれば店頭やバックヤードに在庫が必要になるため、C社の製品在庫はさらに増加します。そのうえ自社ブランド製品のアイテム数を増加させた場合、かなりの製品在庫をストックすることになります。
在庫管理面、経営資源面で製品アイテム数の増加は妥当とは言えません。また分業化と標準化を進めることで、自社ブランド製品の価値を支える「手作り感ある高級仕様」が損なわれる恐れがあります。

結論として、C社の経営資源を有効活用し、最大の効果を得るためには、自社ブランド製品を熟練職人の手作りで高級感を出す方が妥当だと言えます。
そのうえでC社は、販売情報などから既存の製品ラインを絞り込んだ上で、直営店における製品在庫を既存小売店やオンライン販売在庫を含めて一元管理することで製品在庫の適正化を図る必要があるでしょう。
そこまで対応できれば、C社の直営店事業はそこそこ成功するかもしれません。

社長に2択で答えろと言われたので是非もありませんが、コロナ禍にあって多額の投資が必要かつハイリスクな大都市での直営店出店はいかがなものかと思います。
負債を負って勝負に出るより自社サイトに投資をしてオンライン販売を強化したほうが…いえなんでもないです。

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