1次試験結果と令和6年度の1次試験対策


<お知らせ>
令和5年度1次試験の総評、科目ごとの難易度の変化やテーマ別の出題内容、来年度の難易度予想とそれに向けた対策は月刊「企業診断」2023年10月号(9月下旬発売)に掲載予定です。

また、今年の1次試験の出題論点のうち、今年の2次試験対策として押さえておきたい問題についても紹介しています。今年の2次試験を受験される方は必見です!



令和5年度の1次試験の結果が公表されました。

申込者数受験者数①受験者数②
 (A)
試験合格者数
  (B)
試験合格者
(B)/(A)
25,986人21,713人18,621人5,521人29.6%

https://www.j-smeca.jp/attach/test/r05/r05_1ji_toukei.pdf


令和4年度の1次試験合格率は29.6%と昨年度の28.9%から上昇しました。

合格率3割が現時点の診断士1次試験の基準難易度ということになりそうです。

⑴令和5年度の1次試験難易度と令和6年度の難易度予想

科目ごとの合格率の推移は以下の通りです。

令和4年度
科目合格率
令和5年度
科目合格率
令和5年度
科目別傾向
令和6年度
EBA予想
経済学・経済政策10.5%13.1%易化やや難化
財務・会計13.3%14.3%変わらず変わらず
企業経営理論17.3%19.8%変わらず変わらず
運営管理16.1%8.7%難化易化
経営法務26.9%25.6%変わらず変わらず
経営情報システム18.5%11.4%難化易化
中小企業経営・政策10.9%20.6%易化難化

令和5年度の難易度予想はこの過去ブログを参照してください。

今年は経営情報システムと運営管理が難化しました。来年度は両科目ともに易化すると思われ、過去問対策のみで経営情報システムは4割〜5割、運営管理は5割〜6割確保できると思います。

【経営情報システム】

経営情報システムは過去問のみで6割取らせない設計で作問されていますので、受験科目を残されている方はIPAの過去問に取り組むことをお勧めします。令和5年度はITパスポート試験から3問、基本情報技術者試験から4問、応用情報技術者試験から3問、情報セキュリティマネジメント試験から1問出題されました。いずれも診断士の過去問では出題実績はありません。EBAではIPA(横文字記号ばかりだな)で出題された過去問を分析して講座に盛り込んでいますので、独学ではきついぞという方はぜひ活用してください(開講は12月、申込開始は10月を予定しています)。

【中小企業経営・政策】

来年派手に難化する科目は中小企業経営・政策で、それ以外は令和5年度と同程度の難易度になりそうです。中小は科目合格率1桁台もあるので、科目受験で残されている方は他の科目(令和6年度なら経済、企業経営、法務あたり)と合わせることをお勧めします。

⑵診断士試験1次試験の傾向変化

ここ数年の傾向として、2つの傾向変化が指摘できます。

1つ目は、企業経営理論と経営法務の難易度が低下したことです。企業経営理論は令和3年度以降明らかに得点しやすい作問に変わりました(マーケティング論は逆に対応が難しくなっています)。そして経営法務も、令和4年度にこれまでにないレベルまで易化し、その傾向が2年間続きました。

経営法務は悪い意味で安定的に難しい科目でしたが、弁護士を紹介しまくる会話問題を作るのに嫌気が差したのかどうかはわかりませんが、明らかに要求されるレベル感がマイルドになりました。

この2科目の難易度の安定により1次試験はより通過しやすくなると思います。

2つ目は、科目ごとの難易度の変動幅が小さくなってきていることです。これまで1次試験の各科目の難易度は上げては下げ、下げては上げを繰り返す傾向がありました。この傾向は運営管理や中小企業経営政策においては健在ですが、それ以外の科目では科目合格率の変動幅は小さくなってきています。これは、難易度設定が安定してきていることを意味します。

科目合格率14%程度で6割確保が可能です。最近はこの合格率に収斂しつつあるような動きが見られます。1次試験の通過率が3割程度になるような熟練の技が発揮されているのでしょう。

⑶令和6年度の1次試験対策

さきに述べた通り、令和6年度は中小企業経営・政策が難化します。中でも特に中小企業政策が難化します。令和5年度はすべて設問2問構成で出題され、かつお約束の施策ばかりが出題されており、非常に得点しやすい難易度でした。令和6年度はこの設問2問構成を維持しつつ、小難しい施策が複数問出題されるため、一気に5点×複数問失うという事件が起きます。この科目は独学だと厳しいと思いますので、受験機関を活用することをお勧めします。

他の科目は激しく難易度が変動するといった可能性は低いと思います。これは推測になりますが、すでに科目合格制がかなり浸透している中で、特定科目が超難化して1年間の努力が豊水もとい水泡に帰すようなことがないように配慮されているのかもしれません。

今年悔しい思いをされた方は、その悔しさを決して忘れないためにいまの気持ちをノートに残しておきましょう。来年合格するための力になるはずです。