【年末年始特集①】合否を分けた事例Ⅱと事例Ⅳ、および協会評価通知結果について

えぐちです。
今年最後のブログは、協会評価結果とEBA採点サービスの結果から、今年度の2次筆記試験を振り返りたいと思います。

1.合格者と不合格者の得点差の検証

合格者と不合格者の平均点はEBA採点基準で22.7点の差がありました。特に事例Ⅱと事例Ⅳにおいて差がでていました。

詳細はこちら

協会評価通知による評価分布(合格者は含まれていません)は、事例Ⅱで34%がC評価、事例Ⅳでは29%がC評価、そして26%がD評価となっています。
C評価とD評価を足したCD比率は事例Ⅰで3割、事例Ⅱで4割、事例Ⅲで2割、事例Ⅳで5割5分となり、事例ⅡとⅣのCD比率が極端に高いことがわかります。
この傾向はEBA採点における合格者と不合格者の得点差と一致しています。
ちなみにEBA採点の平均点は合格発表前(11月20日集計)の数値です。
このことからも、事例Ⅱと事例Ⅳが合否に大きく影響したことが明白です。
2.事例Ⅳの合格者と不合格者の差についての検証

事例Ⅳの合格者と不合格者の差については、すでに過去のブログで紹介していますのでこちらを参照してください

3.事例Ⅱの合格者と不合格者の差についての検証

事例Ⅱの合格者と不合格者の平均点の差ですが、EBA採点では6.3点の差がついています。
得点差の原因は第3問で3点、第1・2問で約3点となっており、第4問では全く差がついていません。
以前のブログで述べたように、今年度の事例Ⅱは第4問が難問であり、合否に影響していないことがわかります。
この分析の裏付けとなるEBA採点の精度については後述しますので、そちらをお読みになった後でもう一度このデータをご覧になってください。
なお、第4問の出題の趣旨で明示された「X市と連携」につきましては、2019年1月3日のブログで解説します。

今年度の結果だけで見れば、第3問の出来具合が勝敗を分けたことになります。
今年度の事例Ⅱにおいて、優先順位の高い問題は第2問と第3問です。
そのうち自社資源を訴求するだけの第2問と比べて、資源制約を意識した解答が期待された第3問は相対的に難易度が高い問題でしたが、「夜の活気ってなんだ?」となる第4問と比べると自由度が低く、しっかり時間を掛ければ十分に高得点が可能でした。

第4問
夜の活気→【与件本文】①夜通しの祭りと②夜間ライトアップされた名刹がある→①②どちらか?→この活気を取り込むとはどういうことか?→B社はなにをすべきか?

★第4問は「夜の活気」を特定する必要があり自由度が高い。

第3問
従業員によるおもてなし→【与件本文】従業員は語学堪能・外国語でコミュニケーション取れる→インバウンド客との交流→インバウンド客はどんなおもてなしを喜ぶか?→与件本文にはSNS投稿に向く観光地がある→体験価値を提供できれば好意的な投稿が期待できる

★第3問は「語学堪能な従業員を活かした交流」という制約があるため自由度が低い。

今年度、EBA採点で最高得点を取った方(当スクールの合格者)は、「第2問と第3問に40分使えるマネジメント」を意識し、実践できたと振り返っています。
そのために初見問題の第1問は「5分でデータを張り付けるだけ」と割り切り、次いで第4問は「難問だから時間を掛けない」判断ができています。
本試験の現場で「何が難しい問題なのか、優先順位の低い問題なのか」を識別できる能力は、試験傾向の変化や、事例Ⅱでよく出る出題者のサプライズ問題(3C分析、PPM、デシル分析、サービス・リカバリー・システム、コーズリレーティッドマーケティングなど)に惑わされずに時間を支配するために必須の能力です。
過去の問題から学び、新しい来年の試験で勝つために必要な能力を明らかにし、これを意識した努力をすることで、変化(進化もします)する2次試験にも対応できるようになります。
過去問を解く際は「何が正解なのか。どのように解けたのか」という点に関心が行きがちですが、80分での理解が困難であった問題を時間を掛けて分析したとしても、来年の問題に対応できる力が身につくことにはつながりません。
複数人で議論を尽くして過去の知識をストックしても、新しい問題への対応力が養成できるわけではないからです。
過去問を振り返る際は、「どの問題が優先順位の高い問題だったのか」という視点が最も重要です。
その判断基準において必須となる武器が、一次理論になります。
たとえば今年度の事例Ⅰの第3問と第4問比較してみましょう。

第3問(配点20点)
A社の組織改編にはどのような目的があったか。100字以内で答えよ。

第4問(配点20点)
A社が、社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、金銭的・物理的インセンティブの提供以外に、どのようなことに取り組むべきか。中小企業診断士として、100字以内で助言せよ。

設問を解釈してみましょう。
どちらの問題が優先順位の高い問題だと思いましたか?

答えは第4問です。

第3問は「組織改編」の内容を与件本文から解釈する必要がありますが、第4問は設問解釈時点で「内発的動機づけ理論」を応用させる問題であると判断できます。
これが自由度の違いです。
両問題の解説は企業診断1月号の特集で解説していますので、興味ある方はそちらをお読みください。
上記の問題はどちらも配点20点ですが、自由度の低さから得点可能性の高さが異なります。
この評価に基づき時間配分も変えることで、「得点に繋がる」時間を使うことが可能になります。
ちなみにEBA採点における合格者と不合格者の平均点の差は、第3問は0点、第4問は2点です。
データからも第3問は合否を分ける問題ではなかったことが読みとれます。
この優先順位の評価と時間配分の管理こそ、2次筆記試験を攻略するための最需要課題です。
つまるところ、優先順位の高い問題とは、「理論の応用がしやすい問題」と言い換えることができます。

4.EBA採点サービスの評価精度の検証

最後にEBA採点サービスの評価精度についてデータを示したいと思います。
データは、EBAの事前採点と再現答案提出者の協会評価結果の差異を示しています。
データ数は62名です。
なお、採点基準となる模範解答はEBA解答(2018年11月4日作成)を使用しました。
解答の趣旨についてはこちらのブログをご覧ください。

事例ⅠはEBA評価通り(事前A→結果Aなど)が35%と最も多くなりましたが、事前評価+1(事前D→結果Cなど)が32%と突出していることから、評価基準に多少のズレがあったと考えられます。
EBA基準では55点以上をA評価としましたが、A評価基準はもう少し低く、50点程度でもA評価になったと考えられます。
EBA評価では48点以上をA評価としました。
事例Ⅱは全体の47%、約半数が事前評価通りとなりました。
前後の数値が低いことからも、本試験における評価に近い評価だったと考えられます。
事例Ⅲは50点以上をA評価としました。
事前評価通りが45%と、事例Ⅱ同様に約半数が事前評価通りとなりましたが、評価+1も31%と高い数値を示していることから、A評価基準はもう少し低く、本試験ではEBA採点基準で45点以上の得点でもA評価が取れたと考えられます。
事例Ⅳは45点以上でA評価としました。
データより、事前評価通りが35%、評価―1(事前C→結果Dなど)が44%であることから、本試験評価におけるA評価は、EBA採点基準よりもやや厳しく、50点~55点程度は必要だったと考えられます。
再現答案提出にご協力いただいた方で、得点開示結果にご協力いただいた方には、今回紹介していない事例Ⅰと事例Ⅲを含めた全4事例のEBAによる分析結果(設問ごとの得点差など)と2019年度試験対策のポイントについて書いた詳細なレポートを差し上げますので、ぜひご協力ください。

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