出題の趣旨を踏まえた令和3年度の事例Ⅱ

えぐちです。

事例Ⅰに続き今回は事例Ⅱの出題の趣旨を振り返ります。

EBAが考える事例Ⅱの物語はこちらをお読みください。

第1問(配点20点)
 2021年(令和3年)8月末時点のB社の状況を、移動販売の拡大およびネット販売の立ち上げを目的としてSWOT分析によって整理せよ。①~④の解答欄に、それぞれ30字以内で述べること。

【出題の趣旨】
内外の経営環境を分析する能力を問う問題である。

SWOT分析なので追加情報は不要ですね。


第2問(配点25点)
 B社社長は社会全体のオンライン化の流れを踏まえ、ネット販売を通じ、地元産大豆の魅力を全国に伝えたいと考えている。そのためには、どの商品を、どのように販売すべきか。ターゲットを明確にした上で、中小企業診断士の立場から100字以内で助言せよ。

【出題の趣旨】
強み・機会を活かすことで、弱み・脅威を克服するための、ターゲティング戦略、商品戦略、流通戦略を提言する能力を問う問題である。

かなりパンチの効いた趣旨です。この助言問題が第1問と密接に関係していることが明らかにされました。他の設問もそうだと思いますが、少なくとも第2問で使用すべき与件根拠は第1問でも加点されることになります。

また出題者の意図として、①ターゲティング戦略、②商品戦略、③流通戦略(チャネル戦略の意味)の3要素を記述させる意図があったことが明らかにされました。
①ターゲティング戦略、②商品戦略は趣旨から追加的情報は得られませんが、③流通戦略については、「どのチャネルを使うのか」が加点対象になっていることがわかります。

B社の選択し得るチャネルは、⑴Y社ECサイト、⑵豆腐ECサイト、⑶自社サイトが候補となりますが、SWOTとの関係から、「自社の受注用サイトを作る計画もあったが、ノウハウもなく、投資に見合った利益が見込めない」という弱みから、⑶自社サイトはないと判断できます。また、⑵豆腐サイトは、B社の商品に全国的な知名度があるわけでもないことから、妥当性は低いと判断できます。以上より、良質な地下水を販売しているB社とY社との関係性や、全国の食通を顧客として獲得するY社のECサイトを活かしたチャネル戦略が最も妥当性が高いと判断できます。


第3問(配点30点)
 B社のフランチャイズ方式の移動販売において、置き配を導入する場合に、それを利用する高齢者顧客に対して、どのような取り組みを実施すべきか。中小企業診断士の立場から(a)フランチャイザー、(b)フランチャイジーに対して、それぞれ50字以内で助言せよ。

【出題の趣旨】
フランチャイズ方式における役割分担を踏まえて、特定ターゲットへのニーズ対応方法を提言する能力を問う問題である。

とても読み難い設問でしたが、趣旨のおかげでかなり意図が明確になりました。
まず、「フランチャイズ方式における役割分担」とあるため、フランチャイザー、フランチャイジーそれぞれの立場での役割があったとなります。
一般理論としてのフランチャイザーはマーケティング活用の支援で、具体的には商品開発、ブランディング、販促企画や広報活動などがあります。
またフランチャイジーの役割は直接顧客に対応するため、販売促進の実施や顧客関係の構築などがあります。

ただ、この問題は「新型コロナウイルス感染症まん延」を契機とする置き配サービス導入という設定となっているため、「移動販売時で可能だった顧客との直接的接触」ができなくなったという状況を踏まえた施策が期待されていると考えるのが妥当です。たんなる一般理論が期待される可能性は低いと思われます。

「特定のターゲットへのニーズ対応方法」という表現はかなり示唆に富んでいます。それはB社の置き配サービスについて、すでに特定ターゲットのニーズが顕在化しており、そのニーズへの対応方法を提言すればよいという問題である点です。つまり「ニーズ対応」がテーマであり「ニーズ喚起」は題意ではないということになります。これは設問の「それ(置き配)を利用する高齢者顧客」という表現から確認できます。

特定ターゲットは高齢者顧客であることが明示されていますので、これまで高齢者顧客向けの移動販売で行ってきた交流ができなくなることから、これに代替する施策を提言することが期待されていたと判断できます。

具体的には、フランチャイザーの役割として、冷凍ボックスの用意を始め、

小分けにした豆腐→試食用豆腐
使い捨て容器→個装した容器
試食販売で商品説明→月替わり商品案内の作成

などのマーケティング支援によりこれまでフランチャイジーが取り組んできた客単価向上施策の代替となる取り組みが期待されていたと考えられます。

また顧客との接点となるフランチャイジーの役割として、

配達前後の電話による通知
電話による月替わり商品の紹介や試食用商品の説明

などの施策を提言することが期待されていたと考えられます。


第4問(配点25点)
 B社ではX市周辺の主婦層の顧客獲得をめざし、豆腐やおからを材料とする菓子類の新規開発、移動販売を検討している。製品戦略とコミュニケーション戦略について、中小企業診断士の立場から100字以内で助言せよ。

【出題の趣旨】
新しい市場への参入に際して必要となる、製品戦略、コミュニケーション戦略を提言する能力を問う問題である。

追加情報として「新しい市場への参入」という表現が提供されました。つまり第4問はアンゾフの戦略によれば新市場に新製品を投入する多角化戦略となります。
新市場であることから顧客への到達可能性を考慮する必要があり、そのためのチャネルをどう確保すべきかが期待されていたと考えられます。
具体的対応としては、京都修行仲間を製品戦略・コミュニケーション戦略それぞれで活用する解答が期待されていたのではないかと思われます。

製品戦略→和菓子ノウハウや人気店としてX市周辺の主婦層顧客との接点を持っていること(ニーズを収集できる点)を期待
コミュニケーション戦略→少ないながらも主婦層と繋がるIMにおいて人気和菓子店との共創商品である点を訴求して主要ターゲット層への口コミやシェアを期待

次回は事例Ⅲについて書きます。